84ビート ページ39
84.
貴女「勇輝。話さなきゃいけないことがあるの」
国内千秋楽まであと4時間と少し。私はAiiAシアターにある小さなスタジオで国広姿の勇輝と向かい合っていた。
昨日の公演の後「全公演が終わったら2人でゆっくり話したい」というLINEをしたのに、なぜか今日のこの時間を指定されたのだ。
小越「うん」
2人でショッピングに行ったあの日、休憩がてら入ったカフェ。あの時も、勇輝はテーブルの向こうで今と全く同じ笑みを浮かべていた。
たぶん勇輝は、私が何を言おうとしているのか分かっている。
分かっていて、今日を選んだんだ。
あぁ、私、最低だ。
自意識過剰だとか、思い上がりだとか思われるかもしれないけど。
勇輝の、私への想いに気づいていた。
それでも本当のことを伝える勇気が出なくて、友だちの枠からはみ出ることを恐れて。こんな日までずるずると来てしまった。
小越「…もう千秋楽だって。あっという間すぎるね」
貴女「うん」
小越「俺すごく楽しかったよ。レッスン以外で、Aさんに本格的にダンス教えてもらうのなんて初めてだったし」
貴女「初めて一緒に仕事した東京喰種の時は、私アシスタントだったからあんまり関われなかった」
小越「そうだね」
ほの暗いオレンジの光の中で微笑んだ勇輝。
どう話を切り出せばいいのか分からなくて、うまく笑えない私。
貴女「あのね、勇輝」
小越「分かってる」
柔らかく、鋭く。続くはずだった私の言葉を遮ったその言葉。
あまりにも切ない、声。
それでも勇輝の『音』は穏やかに流れてゆく。
小越「分かってるから、俺に言わせて?ここまで来たら男の意地なんだ。俺が、Aさんに伝えなきゃ」
私は何も言わなかった。言えなかった。
腹の底で、用意していた言葉たちがするすると解けていく。あと私に残されたのは、こころひとつだけ。
堀川国広は、ここにはいない。
今、私の目の前に立っているのは、小越勇輝だ。
勇輝のこころ、ひとつだけ。
小越「ちょっと長くなっちゃうけど、俺の話聞いててほしい」
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切れかけミサンガ(プロフ) - 伊澄さん» 初めまして!コメントありがとうございます!同じ境遇ですね笑 受験大変ですが、お互いに頑張りましょう!陰ながら応援させていただきたいです笑 そんなそんな!私はまだまだ駄文です! (2017年4月17日 7時) (レス) id: 7b9e52a361 (このIDを非表示/違反報告)
切れかけミサンガ(プロフ) - みゆみゆさん» こんちには、いつもコメントありがとうございます!本当に…じゅけんさなんてなくなってしまえばいいのに、と最近はそんなことばかり考えてるおります笑 舞台俳優さんのイケメンパワーでお互いに受験乗り切りましょう! (2017年4月17日 7時) (レス) id: 7b9e52a361 (このIDを非表示/違反報告)
伊澄(プロフ) - はじめまして、いつも楽しく読ませていただいています!私も大学受験生かつ流司くんの小説を書いているという全く同じ境遇なのですごく分かります……私の場合流司連載は書き始めたばかりなので作者様には到底及びませんが、お互い頑張りましょうね!! (2017年4月17日 0時) (レス) id: 3742e82f7c (このIDを非表示/違反報告)
みゆみゆ(プロフ) - 大学受験って大変ですよね、私も志望している大学に届くかどうか不安です。お互いに受験頑張りましょう! (2017年4月16日 21時) (レス) id: a5448eda7b (このIDを非表示/違反報告)
切れかけミサンガ(プロフ) - 凜香さん» そうなんですね!お誕生日おめでとうございます!ささやかなプレゼントになれば嬉しいです笑 コメントありがとうございました、亀更新ですが頑張りたいと思いますので生暖かい目で見守っていただけると嬉しいです! (2017年4月2日 8時) (レス) id: 7b9e52a361 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:切れかけミサンガ | 作成日時:2017年2月28日 22時