77ビート ページ31
77.
ザザーン…
夕日が沈もうとする海辺に、流司と2人。
佐藤｢阿津賀志山の時も本公演の前日に2人でここに来たね。俺が役作りで悩んでてさ｣
貴女｢今回悩んでるのは私の方かな？｣
何でもないことみたいに言ったつもりだったけど、流司は押し黙ったままだった。
今、私に必要なもの。私が進化するために必要なこと。
エリックはもうカナダに帰ってしまったけど、彼の言葉はずっと私の頭にこびり付いている。
貴女｢…流司は清光度カンストしつつある感じだね。最近稽古見てても画面の中から出てきたんじゃないかって混乱してくるもん｣
佐藤｢清光度って何｣
貴女｢ふふ、自分で言ったけど良く分からない。新選組も蜂須賀もキャラ濃いからな、今回はみんなそんなに役作りは苦労してなかったね｣
佐藤｢…そーね。一番大変だったのは人間チームかも｣
貴女｢話が重ためだもんね。楽人さんとか本当に大変そうだった｣
足の甲を、波が撫でていく。
今は夏と秋の境。海と陸、生と死、現実と虚構の境。
佐藤｢試練、ねぇ｣
貴女｢…｣
佐藤｢俺のせいかな｣
一瞬、流司が何を言っているのかよく分からなかった。
貴女｢…え？｣
佐藤｢俺のせいで、Aのダンスが『丸くなっちゃった』のかな｣
それまで気にならなかった海水の冷たさが、唐突に私の感覚を叩いた。
初めて恋を知った『特別』な相手が流司だった。確かに流司との出逢いは私の転換点だったかもしれない。
でも。
『特別』だからこそ、流司にそんなことを言って欲しくなかった。言わせてはいけない言葉だった。
私のダンスは私の問題で、それを流司のせいだと思わせてしまった自分が情けない。
こみ上げてきた涙を、ぐっと堪える。
貴女｢…そりゃっ｣
佐藤｢うわ！？いきなり何すんの！？｣
ぱしゃっと、足で水を流司の方に蹴りあげる。
貴女｢ふふふ、頭冷やしてあげようと思って｣
佐藤｢はぁ？｣
砂浜を駆け上がって車の方に向かう。これ以上冷たい海に浸かっていたら泣いてしまいそうだった。
貴女｢流司のせいなんかじゃない。これは絶対だよ｣
佐藤｢でも…｣
貴女｢大丈夫｣
ほとんど自分に言い聞かせていた。大丈夫。
貴女｢どんな試練でも、乗り越えてみせるから｣
あの人を超えるために。夢を叶えるために。流司が余計な心配をしなくてすむように。
私が、強くならなくちゃ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 283人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
切れかけミサンガ(プロフ) - 伊澄さん» 初めまして！コメントありがとうございます！同じ境遇ですね笑 受験大変ですが、お互いに頑張りましょう！陰ながら応援させていただきたいです笑 そんなそんな！私はまだまだ駄文です！ (2017年4月17日 7時) (
レス) id: 7b9e52a361 (このIDを非表示/違反報告)
切れかけミサンガ(プロフ) - みゆみゆさん» こんちには、いつもコメントありがとうございます！本当に…じゅけんさなんてなくなってしまえばいいのに、と最近はそんなことばかり考えてるおります笑 舞台俳優さんのイケメンパワーでお互いに受験乗り切りましょう！ (2017年4月17日 7時) (レス) id: 7b9e52a361 (このIDを非表示/違反報告)
伊澄(プロフ) - はじめまして、いつも楽しく読ませていただいています！私も大学受験生かつ流司くんの小説を書いているという全く同じ境遇なのですごく分かります……私の場合流司連載は書き始めたばかりなので作者様には到底及びませんが、お互い頑張りましょうね！！ (2017年4月17日 0時) (レス) id: 3742e82f7c (このIDを非表示/違反報告)
みゆみゆ(プロフ) - 大学受験って大変ですよね、私も志望している大学に届くかどうか不安です。お互いに受験頑張りましょう！ (2017年4月16日 21時) (レス) id: a5448eda7b (このIDを非表示/違反報告)
切れかけミサンガ(プロフ) - 凜香さん» そうなんですね！お誕生日おめでとうございます！ささやかなプレゼントになれば嬉しいです笑 コメントありがとうございました、亀更新ですが頑張りたいと思いますので生暖かい目で見守っていただけると嬉しいです！ (2017年4月2日 8時) (レス) id: 7b9e52a361 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：切れかけミサンガ | 作成日時：2017年2月28日 22時
