8UPPERS 1 (ページ34)

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行き場のなくなった自分の力は、誰にも受け止められず、人を傷つけるばかりだ。

エースはそれを良く知っている。

「…○○、俺な、プロボクサーになられへんかってん」

渋谷が目を見開いてエースをみる。

渋谷はエースがどうしてもボクサーになりたいと、遊ぶのをやめ、真面目に練習していたことをよく知っている。

「はっきりとした目標やったのに、しっかり作ってた足場が急に無くなって…イライラして、喧嘩ばっかりしとった」

自分はかわいそうなのだ。親に虐待を受け施設に入れられ、やっと持てた夢も追えなくなった。

「自分一人が傷ついて可哀そうで、チャラチャラして笑ってるやつらが憎かった、俺はこんなに苦しんでんのに、あいつらの幸せ少しくらい俺にもあってもええやんって、八つ当たりした」

けどな、とエースが立ち上がる。

「この力、使える場所が見つかった。目指してたもんとはちゃうけど…それでいいと思ってる」

エースは渋谷と向き合う、まるで、自分と向き合う様に。

「やりたいことないなら一緒に探そう、俺が一緒にみつけたる」

エースが渋谷に手を差し伸べる。

「行こう、みんなのところに」