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「それで、急にどうしたの？」
居間に腰を下ろして、母が淹れてくれたお茶を飲んで一息ついた所で母が口を開いた。
『しばらくの間、ここに泊めてほしいの』
「それはいいけども、日本に住んでた時の家は？」
『こっちで仕事が決まったの。だからもう売り払ってきちゃった』
「そうだったのね、連絡の一つくらい入れてほしかったけど」
『全部急でごめんね。家はいま探してる最中だから、見つかったらそっちに住むよ』
「分かったわ、ゆっくりしていきなさい」
急に帰ってきた娘に嫌な顔ひとつしない母に心を救われた。
3年前、何で韓国を飛び出して日本に行くなんて言い出したのか
母は私に一度も聞いてくることはなかった。
彼と何があったかすら話していなかった。
『ねぇ、お母さん』
「ん〜？」
『何で私が韓国を飛び出すってなった時に、何も聞いてこなかったの？』
「あの時のあなたにそんなこと聞けないわよ〜。この世の全てに興味が無くなったって顔してたもの」
『え？そんなに酷かったの？』
「酷かったなんて言葉で片付けられないわよ。目に光はなかったし、痩せきっていたし」
なんとなく自分でもそんな感じだったんだろうなと思って聞いてみたら、案の定酷かったみたいだ。
...お母さんにはちゃんと話さなきゃ。
そう思い口を開きかけた時、玄関の扉が開く音とまたまた懐かしいが聞こえてきた。
「ただいま〜」
「あら、お父さんもう作業終わったのかしら」
そういえば家に帰ってきた時から父の姿が見当たらないなとは思っていた。
畑仕事をしていたのだろうか。
「...A？」
居間に姿を現した父は私を見て目を見開いた。
『お父さん久しぶり』
「久しぶりだな、元気にしてたか？」
『うん、元気だよ。たくさん心配かけてごめんね』
父は今にも泣きそうになりながら私を抱き締めた。
父がこんなになってる姿を初めて見て、あぁ、自分の思ってる以上に心配をかけてしまったんだなと泣きそうになった。
もう少し連絡をするべきだったなということ、あまり実家に顔を出さなかったことを深く後悔した。
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作者名：みちょ | 作成日時：2024年1月2日 2時
