18話 ページ19
あくる日、全員が特別クラスにそろうと、和臣が勢いよく立ちあがって、両手をハーフパンツの後ろポケットにつっこみながら、私たちを見まわした。
「昨日の夜、いいことを思いついたんだ。新説だぜ。しかもふたつも」
得意そうに笑って、少しそっくり返る。
「なぜオレのチャリが盗まれたか。昨日出ていたのは、三つの理由だ。第1、通りすがりの乗り逃げ、第2、うらみによる犯行、第3、先生や先輩の忠告。そして昨日の夜、オレが考えていた第4の理由は、例のコンビニ強盗が乗って逃げた。さらに第5の理由」
え、まだあったの?!第4までで十分でしょうよ。今度はどんな内容なわけ?
「それは」
それは?
「あのチャリが普通の自転車じゃなくて、特別なものだったからだ」
は?
そのまま和臣はよく分からない宝石泥棒やらマイクロフィルムだのをツラツラ述べてゆく。
いや〜、ここまできたら逆に尊敬するわ、私。
和臣が言い終わった途端、和典が和彦の頭をこづいた。
「小塚!おまえ、若武に『ルパン対ホームズ』貸しただろ」
それを聞いた私はギョッとした。
「だめだよ和彦、あんなの貸したら和臣の脳内やばいことなっちゃうよ」
「んだとっ?!」
「だって、黒木が貸してやれって言ったんだぜ」
和彦は不服そうな声をあげ、貴和が、ほっとため息をついた。
「悪かった。今度は、ロアルド・ダールの心理サスペンスでも読ませてやってくれ」
「ん、それがいいよ。ルパン対ホームズよりよっぽど良い」
私のその言葉にくすりと笑い、貴和は立ちあがり、立花さんの方を見た。
「立花、いやがらせのセンを調査しに行こう」
立花さんはうなづいてから、私たちを見まわした。
「盗難防止用チェーンは、素手じゃとても切れないって、兄が言ってた。逃走中の強盗なら、チェーンがついていないのを探すだろうって。それに強盗は、車で逃げたんでしょ。だから第4のセンは、ないと思うな」
和典が、メガネのむこうで一重まぶたのきつい目を、一瞬光らせた。
「立花の兄貴って……もしかして立花裕樹?陸上とラグビーやってて、高等部のトップクラスにいる?」
え、あの?あの立花裕樹さん?まじで?
実は私は立花裕樹さんに勉強を教わったことがある。連絡先も交換させてもらった。
とくにすることはないけれど。
和典の言葉に立花さんがうなづくと、和臣がぼうぜんとしていた。
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作者名:ゆきしま | 作成日時:2021年3月25日 17時