16話 ページ17
彩side
それから私は、自分に割り当てられた2番のいやがらせのセンを調査するために、パートナーの黒木クンと話し合おうとした。けれどもその日はもう遅かったので、明日、学校から帰ってきてから電話で連絡を取り合うことに決め、とりあえず家に帰ることにしたのだった。
私が、自分の秀明バッグに秀明のテキストと、江川先生が持ってきてくれた特別クラスのテキストとを入れていると、黒木クンが、ちらっと自分の腕時計を見、私に言った。
「立花、遅いから送って行こうか？」
私は、びっくりして手を止め、まじまじと黒木クンを見てしまった。同い年の男の子からそんなことを言われるのは、初めてだったから。
私はなんて答えていいのかわからず、あぜんとして黒木クンを見つめるばかりだった。
周りを見ると、みんなは特に動揺していなかった。え、なんで？
私しか混乱していない教室の中、帰る支度を終えた上宮さんと上杉クンが立ち上がった。
「じゃ、うちら帰るから。またね〜」
「お前らさっさと帰れよ。じゃあな」
そう言って颯爽と教室から去っていってしまった。
え……あの二人、あれが普通なの？二人の関係って、何？！しかも上杉クンって女の子に厳しいイメージがある。いったいどうして？！
私はその疑問を残った三人に尋ねた。三人は苦笑して答えてくれた。
「あの二人は家の方向が一緒なんだ」
「そ、そんでもって二人は特別クラス発足時から仲が良いからな」
「気が合うんだよ。上杉が唯一仲良くしてる女の子さ。それにAの性格も相性が良いんだろうね。上杉の嫌いな部類の女の子とは真反対にAはいるからね」
へえ、そんなんだ。確かに仲良さそうだったな。
だから若武や小塚クンは動揺していなかったのね。これが当たり前だったのか。
そう納得している私に黒木クンは私の腕を掴んで若武と小塚クンに、
「行こ、じゃ、お先」
と言って足早に教室を出た。
その日の帰り道はまるでとても素敵な恋人と一緒に歩いているような時間だった。
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作者名：ゆきしま | 作成日時：2021年3月25日 17時
