149話 ページ2
起きた彼は数秒固まって、普段は中々見る事の出来ない目を大きく開いて此方を凝視して居た
だが彼も脳が正常に動き始めたのだろう
「ねぇ、敦君……否、A」
「は、はい」
「一寸だけ歯、食い縛って」
「え」
胸倉を掴んで普段からは想像出来ないような言葉を吐いたかと思えばいつの間にか視界は横に向いて居た
「ッ」
その後から来る重い痛み
グーで殴られた訳だ
躰は敦のだから手加減無用って判断したのかな
まぁ個人的に平手打ちよりかは幾分かマシだ
じわじわと痛む頬を擦りながら何処か他人事の様に考えて居たら今度は首と腰に腕が回り、彼の匂いが近くなった
「飴と鞭。ですか…」
「……」
抱き締めた侭何も言葉を発さない彼の背中を溜め息混じりにぽんぽんと優しく叩く
腕に篭った力が一瞬強くなったが案外すんなりと腕は解けた
肩で涙を拭いては欲しくなかったが、彼が涙を流して居るのも私が原因だと重々承知しているので、とやかく云う権利は無い
意識が無い間に着替えさせられたであろう服の袖を伸ばして目が傷付かない様に優しく拭けば彼が口を開き始めた
「……心配した」
「…はい」
「僕、云った筈だよ。態とは駄目って…」
「あれはあの時だけ……ってのは違うと判りましたから手に作った拳を降ろして下さい」
そう促せば素直に降ろして呉れた
そしてちゃんと座り直した彼にその場に有った水を差し出す
今更だけど勝手に繋がれてた管外しちゃったけど良いのかな…
ま、何とかなるか
「君が運ばれて来た時、心臓部から大量の血が流れてて、本当に危険な状況だった」
「そう、ですか」
「与謝野さんの治療を受ける手前で、君の治癒能力が発動したんだ。お陰で傷は塞がったが今度は心臓が動かなかった」
嗚呼、だから生体情報
敦も焦ったんだろうな。きっと
「急いで蘇生術を行えば心臓は動いたけど、君が目覚めるのがいつなのか判らなかったんだ」
「それはそれは。御迷惑をお掛けしました」
「…他人事の様に云うのはこの際放っておくけど、聞きたい事が有る」
「はい。何ですか」
「……何でこんな事したの」
強く真っ直ぐ此方を覗く双方の目は心配は勿論。不安や恐怖や悲しみの色が伺えた
人間観察をしてたってのはこういう時に不便だ
判りたくなかった事まで何となく判ってしまう
で、何だっけ
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眠いちゃん - 敦君と夢主ちゃんが報われることを願います (2023年2月26日 23時) (レス) @page35 id: acdc06f415 (このIDを非表示/違反報告)
すー(プロフ) - 面白いです!続きが更新されるの待ってます。頑張ってください。 (2020年10月3日 22時) (レス) id: 91e5b79796 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 久しぶりの更新めっちゃ嬉しいです!! これからも更新頑張って下さい!! (2020年3月5日 9時) (レス) id: adc186f0a4 (このIDを非表示/違反報告)
かりんとう(プロフ) - 更新お疲れ様です!毎回毎回、星の一番右を押してしまって「既に投票済みです」って言われてしまいます笑徐々に主人公が自分自身について知っていく…これからどうなるのかすごく楽しみです。次回の更新までまってます!!がんばってください!!!! (2019年10月13日 9時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
かりんとう(プロフ) - うおおお、、、!!!更新されている……!!!嬉しすぎる、、、!! (2019年9月14日 21時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のんのーー | 作成日時:2018年4月22日 20時