93話 ページ46
「こんな僻地で再び君と見えるとは……余程私と雌雄を決したいらしい」
髪と外套を靡かせ、何となく格好良さ気な台詞を云って居る相手は唯の犬
それ以上でもそれ以下でもない、紛れも無い唯の犬だ
犬が鳴けば切り札があると云って餌を見せびらかせる。そしてグッと握って手にあった筈の餌が無いのを見せ付ければ
「これが格の違いだよ。私の勝ちだ」
だなんて勝ち誇ったように胸を張っている
何やってんだこの人
それで果てしなくどうでもいい決着は着いたのか、此方に歩いて来て隣に座る。何故かドックフードを食べながら
「犬……苦手なんですか?」
「人間より余程難敵だよ」
言葉が通じないから人間よりは遥かに楽だと思うんだけどな
だなんてこの人に云っても通じないか
「それで、事務員さん達の避難は?」
「国木田さんからの連絡で、予定通り次の列車だそうです。事務員が狙われるなんて……この三社戦争、探偵社は大丈夫でしょうか」
「そのようだねぇ。私の見立てでは探偵社が最も劣勢。最優勢はマフィアかな」
だよなぁ……
だって相手は
「因みにですが、逆転の計略は無いんですか?」
「あるよ。これくらい」
そう云って彼が伸ばした指は三本。この場合三百を意味するのだが、君は初めて見たら三百だなんて判らないだろう
抑も初めてなら判る訳が無い
「三つも?」
「いや?三百だけど」
「三百!?」
「けどね敦君、戦況は生き物だ。必勝の秘策が僅かな状況変化ひとつで愚策に豹変する。だから情報が大事なのだよ」
「……」
「特に今回は相手が相手だから刺客から逃れて気が緩む今を狙って必ず何か仕掛けてくるよ」
その仕掛けられたものにまんまと嵌るのが君って訳だ
幻覚に襲われて、ナオミさんと春野さんを傷付けて
今から考えるだけでも怖いね
勿論私は君だから君の事は全力で護るよ。それは約束する
でも、今回は恐怖の度が違うって云うか……
否、今までのが怖くなかったかって云えば嘘になるんだけど今までと今回のは違うから
未知だから怖いんだよね
「敦君」
「はい」
「余り気負わない方が良い。悩みがあるなら云ってくれても構わないのだよ?」
今の事を云えたら楽なんだろうけど、そしたら未来が判るって事がバレる
彼も又、優し過ぎるんだ
「だ、大丈夫です!」
「……そう」
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銀色ミカン(プロフ) - 1話から一気見しちゃいました!面白いです!更新待ってます。頑張ってください! (2017年12月17日 2時) (レス) id: c55513f974 (このIDを非表示/違反報告)
時雨零(プロフ) - お待ちしておりました!おかえりなさい! (2017年11月14日 0時) (レス) id: 7585b82a1c (このIDを非表示/違反報告)
芋娘@悪の伝道師?ウリエル?(プロフ) - ファッ!?オーストラリア!?あらまー…お気を付けて!! (2017年10月31日 14時) (レス) id: a51cded6e4 (このIDを非表示/違反報告)
紅月(プロフ) - オーストラリア!!!羨ましい…!楽しんで下さい!!! (2017年10月30日 22時) (レス) id: 97c5c84046 (このIDを非表示/違反報告)
ロイゼ@魔法契約民(プロフ) - いってらー、です! 楽しんできて下さいね(^^*) (2017年10月30日 16時) (レス) id: 677bf3b84c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のんのーー | 作成日時:2017年10月15日 20時