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91話 ページ44

扉付近の壁に寄り掛かって居たら尾崎紅葉がゆっくりと目を開けた


そしてこの空間に居る人間を見て目を大きく開き、鋭い目付きへと変わる




「やあ姐さん、ご無沙汰」


「……この程度の縛めで私を紮げられると思うたか」


「真逆。だから私が見張りに」




にっこり明るく笑って返事をする太宰さんを鼻で笑い、挨拶を返した。「裏切り者」付きで

どうやら太宰さんは凡る組織から人気者のようで、首を狙われているらしい



まぁ彼の履歴が履歴だから当然なのかも知れないけど……


つい最近まで退屈な日常を過ごしていた一般人には有り得ない話だ





「……童」


「!」


「鏡花は無事かえ?」




この質問に確か君は事実を告げるんだよね


それで貴女の所為だと云ったら笑われて怒る



でもさ、この場合は誰の所為でも無いんじゃないかな


でも私は君だからな……



どうしたものか




「敦君…?」


「……彼女は、行方知らずだ」




でも、若しこの時


君が少しでも頭が冷えて居たのなら





きっと誰かの所為にはせずに




「貴女と………僕の所為だ」


「!」




自分すらも責めるんじゃないかな



彼女を迷わせた

迷う時間を与えてしまった二人の所為だって



私だったら境遇の所為にするね




「くく……くくく、くくく……」




それで笑われてもさ


それが事実なのだと笑う彼女の許容してさ




「僕は、彼女から逃げない」


「!」


「貴女だけ逃げたいなら逃げれば良い」


「何っ……」




笑いを止める勢いで宣戦布告するんじゃない?




私には眩し過ぎるくらいのギラギラした瞳で真っ直ぐ彼女を見て


貴女は向かい合わないのかと何処かで無意識乍ら挑発する様に




「敦君、後の事は私に任せ給え。君は外に」




それで何かを察知して止めに入るのが黙ってやり取りを見ていた太宰さんだ


直ぐに追い出するんだったら何で此処に連れて来たんだよ



尾崎紅葉よりも苛立つ彼に心の中でそう云って扉に手を掛ける


チラッと振り向くと彼女は此方を見ていた




何か望む様な

期待を込めた様な

羨む様な


そんな感情が入り混じった目なのに何処か悲しそうな表情を浮かべていた


それとは対照的に詐欺師の方がお似合いだと云いたくなる明るく優しい笑顔を浮かべた太宰さんが見届けている




そんな視線を背中で感じ乍ら外に出た




「……ご免、敦」




誰も居ない場所で勝手に独走した事を彼に謝る



その声はその場に虚しく響くだけだった

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銀色ミカン(プロフ) - 1話から一気見しちゃいました!面白いです!更新待ってます。頑張ってください! (2017年12月17日 2時) (レス) id: c55513f974 (このIDを非表示/違反報告)
時雨零(プロフ) - お待ちしておりました!おかえりなさい! (2017年11月14日 0時) (レス) id: 7585b82a1c (このIDを非表示/違反報告)
芋娘@悪の伝道師?ウリエル?(プロフ) - ファッ!?オーストラリア!?あらまー…お気を付けて!! (2017年10月31日 14時) (レス) id: a51cded6e4 (このIDを非表示/違反報告)
紅月(プロフ) - オーストラリア!!!羨ましい…!楽しんで下さい!!! (2017年10月30日 22時) (レス) id: 97c5c84046 (このIDを非表示/違反報告)
ロイゼ@魔法契約民(プロフ) - いってらー、です! 楽しんできて下さいね(^^*) (2017年10月30日 16時) (レス) id: 677bf3b84c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:のんのーー | 作成日時:2017年10月15日 20時

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