【銀魂】難あり波もあり

荒れた内心 ページ10

ー銀時サイドー


そうだ。こいつの調子は少し前からおかしい。

普段大人しくて目立たねェ奴ほど、
何か行動を起こすと怖いなんて聞くが、
確かにその通りかもしれねェ。


スイーツバイキングに心踊って特に考えも
しなかったが、よく考えてみりゃ、
発言行動を含め、Aの挙動が不審である。






(ーー始まりは、)



・・確か、誰も為し得なかった、俺を褒めるという
行為を難なくやってのけたことだ。

いつも通りの調子で、嘘偽りも悪意も何一つもって
ませんとでも言う純粋を顔に滲ませ、
「落ち着くんです」なんて言い切りやがったのだ。
・・おかげであの場はひどく荒れた。

いや、荒れたのは俺の内心か。


不意打ちのそれに動じないなど不可能。
自慢じゃねーが、何せ俺は褒め慣れてない。




お次に来たのが、このスイーツバイキング。
こいつの場合は、友達の一人や二人いそうなもんだ

完全なる仕事上の付き合いのAが、チケットの
片割れを俺に手渡した。しかもそれは自ら購入した
ものだという。自ら進んで奢るというもはや人類なのか神なのかという領域で疑わざるを得ない大技を
やってのけた。ーー極め付けは、





"顔を見なくなって、何だか落ち着かなくて"






こんな思わせぶりな言葉を、女が軽々口にするたァ
どこぞの風俗嬢でもあるめェし、信用しねーに
越したことはねェだろうが。・・何せこいつだ。

普通を磨きに磨きあげたツワモノ。
何をするにも平凡で、嘘をついて状況を捻るという
ことを知らない。そんな女に、そんなテクニックが
使いこなせるだろうか。ーー答えはノーだろう。
じゃあ、本当に本心から言ってるわけかこいつは。



ふわりと浮かんでは消える疑問の数々。
チラ見した目の前の女が、いつも以上に上等な玉に
みえるのは、一体どんな魔法なのか。


生憎糖分のおかげで、俺は今頭が冴えている。
そんな状態で辿りついた答え_____。



かちゃり、机の上に静かにフォークを戻す。

時間はまだあるのに手を止めた俺に、Aは
不思議そうにキョトンとこっちをみた。









「お前さ、ーーー俺のこと好きなの？」









もちろん、いうつもりはなかったし、
こんなことを女に聞くなんざ野暮でしかない。
せめて冗談めいた言い方をすればよかったのかも
しれねーか、なぜか俺の声色は真剣だった。






「ーーー・・え？」



そうして目の前の女は、赤面を深め、
手に持ったフォークをガチャンと
床に落としたのだった。

ストレートな気持ち→←本心から

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す