【銀魂】難あり波もあり

らしいこと ページ30

兄さんが帰った後、銀さんはあくびをして肩を回す。・・いやはや、誠に申し訳ないことをした。


淹れ直したお茶を前におけば、
「嵐みてーだったな」と。気の抜けた声で呟いた。



「そうですね。いつも元気で全力なので、私からすればもう少し省エネでいてほしいんですが」

「確かに燃費悪そうだな。相当食うんじゃねーの」

「おっしゃる通りで、」



よく食べよく遊びよく寝るのが、彼流の健康の極意
いつまでも健康でいてくれるのはいいけれど、
そろそろ落ち着いて結婚相手でも見つけなきゃ。






「ーーーでも、いい機会だったのかもな」

「え？」

「お前のアニキ出世頭だろ？何かとたかりやすい」

「財布ですか」

「んなひでェこと言ってねーよ。お財布様だ」

「敬ったって意味は同じなんですよ銀さん」





あー疲れた、と首を回すその人に、笑みが漏れる。

兄さんのあの様子では、きっと銀さんのこと
気に入ったんだろうな。普段のだらけっぷりを
みたらびっくりするかもしれない。






「ーーねえ銀さん」

「あ？」


「・・兄さんに言った言葉、本当ですか？」




平凡な私だからこそ、なんて、
そんな言葉、誰からももらったことはなかった。

嬉しくて恥ずかしくて、ちょっぴり複雑で。






「俺がお前のアニキ追っ払うために
咄嗟にデタラメ言ったとでも思ってんのか？」

「い、いえ！そんなことはないですけど！」




銀さんを信用していないわけじゃない。ーーけど、
やはりどこかふわふわしていて。

よく考えてみたら、私が好きだと感じたこの人と
今こうして一緒にいられることに対して、
まだ実感がないのかもしれない。







「・・あんなこっぱずかしい嘘が平気でつけんなら
とっくにホストにでも転職してるよ」




湯飲みの中で緩やかに踊る湯気たちを見つめていた
はずの銀さんは、横に座る私に視線を落とす。




「ーーー確かにお前は清々しいほどの平凡さだが
それこそお前の長所だ。・・俺が今ここにいんのは
その長所のおかげだろ？」



赤くてまっすぐな瞳は、死んだ魚の眼と揶揄される
らしいけど、いざという時は煌めくのだ。
そこに私が映っているのだから、今顔が熱いのは
不可抗力ってやつだろう。






「銀さんって、ズルいですね」

「はっ、大人ってのはズル賢くなきゃ
やってけねーの」

「私も大人ですけど」

「へぇ、そうかい。ーーなら、」







"大人らしいこと、するか"

乗りこなす勢いで。→←尊敬と憧れの果て

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