【銀魂】光に焦がる虫

だから ページ10

十四郎は静かにタバコをふかす。
何も語らず言い訳もせず。

いつもと同じ場所に座っている。







「ーーーここは違法営業店だけれど、
逮捕しないのかい？」


「違法営業の取り締まりは、管轄外だからな」


「・・つくづく甘い男だよ」




苦笑が漏れた。
警察なんて立派な立場がありながら、
違法遊郭に通ってたなんて。そんなことが割れたら
大事じゃないか。

何を呑気に顔を出してるんだか。






「残念だ。あんたに手錠かけられるのも悪くないと
思ったんだけど」

「言ってろ」




しっくりきた。
この人が警察であることに。

犯人追っかけてる姿だって、容易に浮かんでくる。






「・・いつかここに通ってんのがバレたら、
クビかね、あんた」


「さあな」


「逆にこっちの人間にバレたりしたら、
奇襲でも仕掛けてくるかもしれないよ？あんたらに
追われてる輩だって、大勢いるだろうし」



「・・そりゃあ、嬉しくねェ来客だな」





どれもこれも、危険すぎる。
こうして悠々とタバコの紫煙をくゆらすこの人が
私がここに縛り付けたせいで、生きていく道を
変えることになってしまったら。

そんなの、私が耐えられそうもないし。


私はどうなってもいい。
この世界で生きるのが苦しくても、それでも彼に
触れたい。ーーそう思ったから繋ぎ止めたんだ。

けれど、十四郎を巻き込む気なんて、更々ない。



互いの立場から、許されない恋。
あぁ、なんてロマンチックで漫画的なんだろう。

・・けれど、それをハッピーエンドにするには、
あまりにも壁が高すぎて。









「ねえ、十四郎」









"もし、私が、ーーーあんたのことが好きだって
言ったら、どうする？"


"・・その時は、もう二度と、ここには来ねェ"









「ーーー私は、あんたのことが好き」









だから、さようなら。

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