【銀魂】光に焦がる虫

積み木 ページ9

ー土方サイドー





「あんた、大友の件は解決したって言ってたね」


「・・あぁ」




Aの言葉は、静かで無機質で。
いつもとはかけ離れた様子に、俺も少し身構えた。

伏せられた表情には、
どんな色が浮かんでいるのだろう。






「私が情報を提供してからすぐに、
大友は逮捕された」




言わんとしていることは、何となくわかる気がした

揺れるランプの光が、俺たちの影を作り、
ゆらゆらと左右に踊る。それを呆然と眺めながら
静かに耳を傾けた。







「あんたのいう"解決"が、"逮捕"なんだとしたら。
ーーー"お兄さん"は、一体何者なんだい？」




再び、目があった。いつも通り笑みを浮かべた口元
それとは対照的に、不安に揺れるそいつの瞳が、
何かを俺に訴えかける。



騙すつもりなどなかった。ただ、こうして俺が
この世界にいること自体、危険な行為であること。
おかしてはならない禁忌なのだということ。


ストッパーとなったそれは、ズルズルと中途半端に
繋げてきたこいつとの関係の中で、いつしか明かす
タイミングを失った。ーーいや、





(・・隠したかったのかもしれねェな)




素性がばれれば、関係は崩れていく。

ーーーたった一つ、偽りで固められたキスをする。
それだけの物であっても、・・いつのまにやら
俺にとって、かけがえのない物になっていた。









，









「十四郎は、ーー警察？」







変わらぬ静かで無機質な声が、
いとも簡単に、俺の正体を暴いていった。


警察。真選組。
まんじりたりとも後悔したことはない。
例えば、今のような状況に陥っても。


煙を吐き出し、目を瞑る。
世界は真っ暗に塗りつぶされた。

ただ一人、女の存在を感じながら。









「ーーーあぁ」




隠す気が起きなかったのは、この女には隠し事など
無意味だとわかっているからだ。

利口で、鋭くて。時に脆い。

「そうかい」と。終始穏やかな口調で言い切った
そいつに、俺も頬を緩めた。





「なんだい、ぴったりじゃないか」



次に、Aはあっけらかんと言い放つ。
いつものようにクスクスと笑いながら。





「前から考えてたんだ。あんたの本当の職業は
何だろうって。お役所勤めかと思ってたけど、
・・警察かぁ。うん、お似合いだよ」


「お役所仕事にゃ変わりねーがな」




不安定だった積み木が、いよいよ崩れそうだ。

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