検索窓
今日:5 hit、昨日:5 hit、合計:53,419 hit

お子ちゃま ページ31

再び、私の隣には十四郎がいる。

あの狭い遊郭の部屋ではなくて。
彼の世界で、光の中で、肩を並べている。

その事実は、とんでもなく幸せなことで。


昼、ーー快晴に恵まれ、暖かな気候の中、
間も無くピンクで色づくであろう並木道を
ぶらついていた。








「これから、どうするつもりだ」

「そうさね。家探しだったり職探しだったり。
忙しくなりそうだよ。何せ私には戸籍すらない」


「・・それは、」
「あぁいいんだよ。自分で何とかするさ」



いまなら、何でもできそうな気がする。
根拠も何もないけれど、希望に溢れるって、
こういうことを言うのかもしれない。







「今日は仕事はいいのかい?」

「・・アホな上司の気遣いだ。今日はお前に
付き合ってやれと」


「いい職場じゃないか」




歩く姿こそいつもと変わりないが、
先日助けられた時に着ていた黒い職場の制服では
なく、見慣れた私服だ。






「じゃあ、その上司さんに甘えて、今日は存分に
付き合ってもらおうかね」


「・・調子のいい女だな」

「惚れた男と過ごせるってのに、暗い顔した女は
いやだろう?」


「まあ、そりゃ一理あるが」




薄い化粧。乱雑にまとめた髪。
遊女なんて肩書きは想像できないほど、
私は素朴な町娘。・・普通の女になれただろうか。







「早速なんだけど」

「何だよ」


「ーーー先日の料金、支払ってもらうよ」

「は?・・ッ、」



着物の合わせをぐいと引っ張れば、
前のめりに近づいた彼の体。

精一杯背伸びした私の唇は、見事、その人のそれに
届いたのだった。タバコの味が、私の口の中にも
ひろがった。



小さくリップ音を立てて離れれば、
十四郎が眉を寄せているのが見えて。









「ーーーーまいどあり」




ほんの数秒。・・けれど、あの部屋で交わしたキス
より、もっと甘くて、もっと心地いい。

緩やかに吹き抜ける風に揺れる髪が、
時折私の視界を塞ぐ。その度に彼の顔が
見えなくなることが、もどかしくて。






「・・いつも、先を越されちまう」

「そりゃあんたがまだお子ちゃまだからさ」


「はっ、言いやがる」





だがまあ、と。









「ーーーこっから先は、遠慮も手加減も様子見も
必要ねェってこった」

紐解く→←ケジメ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (120 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
146人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 土方十四郎   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

シュシュ☆☆(プロフ) - 燐さん» ありがとうございます!最後まで読んでくださり、感謝ですっ!! (2018年9月10日 21時) (レス) id: ad40a3ccd1 (このIDを非表示/違反報告)
- 切ない感じからハッピーエンド、感動しました! (2018年9月8日 17時) (レス) id: 6e4e502025 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 蜜柑さん» ありがとうございます!無事完結でございます!そんなお褒めのお言葉をいただきまして、私も言葉にならない喜びに震えております…!読んでくださり、ありがとうございましたっ! (2018年1月26日 22時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - またコメ失礼します。完結おめでとうございます!今回も、なんか言葉にできないけどすばらしくすばらしかったです!!(語彙力が…)シュシュさんの小説大好きなので、これからも新作待ってます!ぜひともよろしくお願いします!! (2018年1月22日 21時) (レス) id: 6a812c0c50 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - ミドリムシさん» ありがとうございます!シリアス、確かに多いですね!クールでかっこいいイメージがそうさせるのかも…?足を運んでくださり、本当に感謝です! (2018年1月22日 14時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:シュシュ☆☆ | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年1月14日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。