【銀魂】棘を包んだ花

せいいっぱいの背伸び ページ19

私が自ら訪れるのは、一体いつぶりだろう。ーーこの立派な襖の向こうに、父上がいる。



話があると事前に伝え、時間を取ってもらった次第であるが、・・内容がないようなだけに、湧き出るのは不安と緊張のみなのだ。


言いたいことすら、上手くまとめられていない。






「・・父上、」

「ーーー入れ」




力強い一言が聞こえた。
この人の一言は、政界を大きく揺らすこともある。

とても素敵な人だけれど、ーーやはり、それだけの
実力と権力を兼ね備えているのだ。








「珍しいな、お前からこんな申し出は。
ーーーそれで、話とは何だね？」




キセルから登る紫煙。
上品な煙の匂いが、部屋に漂っていた。

読み物をしていたらしい父上は、その手を止め、
ここ最近使い出した老眼鏡を外した。






「お時間を取らせてしまい、申し訳ありません」

「いいんだよ。たまには娘とこうして話がしたい」




こんなに優しく尊大な父に、・・私は最大の我儘を
ぶつけようとしている。悲しそうな顔をするだろうか。何を馬鹿なことをと怒るだろうか。

どちらにしても、私にとって心が痛む結果に
なることは必然だ。ーーだがきっと、世間知らずの
私には、直接伝えるなんていう単純な方法しか
思いつかなかった。





「父上、先日の見合い、勝手にお断りして
申し訳ありませんでした」


「・・何だ、そんな話かね」




苦笑じみた笑みを見せた父上は、
小さく息を吐いた。






「いつのまにやら、私の手を離れていたようだ。
まあそれもそうか。お前は、もう19だったな

「ーーーそれに、ここ最近で雰囲気が変わった。
真選組にいた間に、何かあったのかな」



「・・ええ」




そうだ。こうして私が父上に我儘を言いに来たのも
毎日、考えるだけで胸が痛くてたまらないのも、
全部、真選組の、ーーあの男のせいなのだ。







「・・たくさんのものを学びました。
町の者は皆、のびのびと自由にいきているのね。
とても、眩しかった」



「そうか」





止まることのない言葉。

本当は、父上を傷つけないように、慎重に述べる
つもりだったのに。まだ子供な私の口からは、
こぼれ落ちてしまった。









「ーーー私、好きな人がいます」







せいいっぱいの背伸び。

文→←無意味に流れる

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