#52 俺が ページ4
＊・オビside・＊
ずっと気になってた、あの夜の涙の理由を聞いた。
A嬢にそんな過去があったなんて...
両親が亡くなったのは知っていた。けど、
気持ちの整理をつける時間もなく、
ちゃんとしたお別れも出来ずにいたとは...
想像もつかなかった。
(辛い事思い出させちゃったな......)
『私は島民の為に最期まで動いたお父様もお母様も
誇りに思っているわ。ただ、
オリンマリスの件が、卯の花病の時とそっくりでさ...
ちょっとあの日 思い出しちゃったみたい』
へらっと笑ってみせるA嬢。
満面の笑みを2回も見た俺には、誤魔化してる笑顔だってすぐにわかるのに。
そして次に驚いたのは、
A嬢の髪色は生まれつきのものではないということ。
("綺麗だ"なんて言って、無神経だったかねぇ...)
オ「ごめん、俺...知らずに綺麗だなんて言った」
『え...！？いやいや、謝らないでよ！！
オビにそう言って貰えてどれだけ嬉しかったか...！』
正直に謝ると、予想外の言葉が次々と紡がれる。
『私、病のせいで変わってしまった髪色で...自分では
どうしても好きになれなかったから......
あの時オビに褒められたこと、ほんとに嬉しかった！
だから私は、"ありがとう"って その感情しかないよ...？』
そう言って、不安そうに俺の顔を覗き込んでくる。
その仕草や表情に小さく心臓が鳴った。
(この人の強がりの笑顔なんて、もう見たくないな)
いつでも笑っててほしい。
けど、泣くのを我慢してほしい訳ではなくてｰｰｰ
オ「もし、思いっきり泣きたくなったらさぁ...
俺が慰めるから呼んでよ、A嬢」
自分でもびっくりした。
会うのは明日が最後かもしれないのに、
"呼んでよ" なんて言って、頭をぽんぽんして...
(こんな時、主だったら
ぎゅって抱きしめたりするんだろうけど...
俺はそんなの似合わないし、そんな間柄でもないしねえ)
A嬢が、ぐいっと切り替えるように酒を飲む。
『ねぇ...私もひとつ、聞いていいかしら？』
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作者名：りち | 作成日時：2023年1月25日 18時
