#72 恋心 ページ24
私が知っているオビは、それだけじゃない。
一緒に過ごした夜を思い出す。
私の涙を見ても、その場で変に慰めたり詮索を入れたりは
しなかった。
理由を聞いても、ただ 私は泣いたのか
と聞くだけで同情は一切しなかった。
それが、とても心地良かった。
あんなに優しい人なのに...
オビは白雪もだし、ゼンの事も好きだから
自分を隠しているんだ。
(他に知っている人はいないんだったら、
私があの人を支えたい...
側に居たい...と思ったのよね)
また目を閉じる。
脳裏に焼き付いて離れないのはオビの顔。
(なんだ。イザナ様にあんな事言っておいて...
我ながら呆れるわね。
"オビの側に居たいから"
って...気付いていなかっただけで答えはとっくに出ていた
じゃないの)
目を細めて優しく笑う顔。
ニッていたずらに笑う顔。
私の目を見る黄色い綺麗な猫目。
自分とは正反対の黒髪。
頭を撫でてくれた温かい手。
全部、鮮明に思い出せる。
思い出せば出すほど、心臓の高鳴りが増していく。
こんな感情が自分の中にあるなんて、知らなかった。
その感情の名前もわからない。
(...わからないなんて、嘘ね。
もうこんなの 認めるしかないわ)
私はオビのことが好きなんだ。オビに恋をしているんだ。
いつの間にか大きくなりすぎてしまった私の恋心。
一体いつから...？と考えてみる。
秘密を共有した時...
違うな。
泣いてた理由を聞かないでいてくれた夜...
いや、もっと前ｰｰｰ
(ずっとだ。ずっと見てたんだ、私)
出会った時から気にかけていた。
でも白雪を好きな人に恋なんて......なんで
(ううん、そんなの答えは出ないわよね。
気付いたらいつもオビのことばかり考えていたもの)
この気持ちは、伝えてもきっと困らせるだけだ。
言わないようにしよう。
でも 走り出した時の暗い想いは晴れて、
今は少し清々しい。
自分がどうしたいかがわかって、心が軽くなった。
(さ！薬室へ行かなきゃ！)
ガラクさんには心配をかけることなく挨拶が出来そうだ。
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作者名：りち | 作成日時：2023年1月25日 18時
