#71 秘密の場所で ページ23
あの後、城内を走るのはいけないと思い
すぐ外へ出た。
今 自分がどんな顔をしているのかわからない状態で兵にも誰にも会いたくなかったため、
使えそうな足場を見分けながら動いていく。
(...ガラクさんの所へ挨拶に行くんだった)
けど、今のままじゃいらない心配をかけるだけね。
少しゆっくり落ち着ける場所に行くことにした。
『よっ、と』
1本の木に登り、腰掛ける。
そう、ここは私とゼンが2人でよく話していた場所。
ミツヒデさんも知らない隠れ家。
そこで1人、ウィスタル城に掲げられなびく旗を見る。
今はゼンは来ない。
(ま、1人になりたくて選んだ場所だから...
今は来てくれなくてむしろ助かるんだけれどね)
目を閉じて、
風にサァサァと揺らされる木の音に耳を澄ませる。
深く息を吸って目を開いた。
うん、もう大丈夫。
それにしても、どうして帰ってきてしまったんだろう。
(別になんてことない事だったじゃない。
オビが白雪を想ってるのは、
出会った時からずっと視線で気付いていたもの。
ずっと...)
見た目から、なんだか怪しい人だなと思ってよく見てた。
すると気付いてしまった。オビの白雪を見る視線。
その視線にたしかな熱が篭っていると。
それは洞窟に向かう途中、
雪山のやりとりで明らかになっていき、
本人に聞いたら、私の勘違いではない事がわかった。
いつも飄々としていて、
何を考えているのかあまりわからないタイプの人。
周囲に無関心なようで よく周りの物や人を見て、
先を考えて洞窟の道順を覚えていたり、
私の体調の変化も見抜く。
器用になんでもこなしてしまう人だって、
初めて見た人なら誰もがそう感じるであろう人が
自分の感情を、主人と想い人の為に隠しているんだ...
オビを想うと、どうしようもなく切なくなる。
そして、心臓が脈打つｰｰｰｰｰｰ
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作者名：りち | 作成日時：2023年1月25日 18時
