げーむちゅうどく(未完)【爆豪】 (ページ12)

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軽傷12 ページ12

「おはようAちゃん」

私に挨拶をしてくるのは緑谷出久くらいだ。私も挨拶は返すが、それ以上は喋らない。だって彼はヒーローだから、話すと目立ってしまう。

「はよ」

短く挨拶をして、席につく。今日は太鼓●達人だ。イヤホンをして、スイッチを入れた。

何分かして、私の前に誰か立っているような気配がした。

上を見てみると、いたのは意外にも爆豪勝己。今日は泣いていなかった。

「おい」

面倒なので無視しよう。攻略対象とはいえ、ゲームを邪魔されるのは嫌だ。

「聞いてんのか？」

よし、昨日の続きから。間違ってはじめからを押さないように。

「おい！」

そこで爆豪勝己に掴みかかられた。ネクタイを引っ張られ、足は床に着いていない。

「あ、あ」

ゲーム機を見ると、はじめから、が選択され、冒頭のアニメーションが流れていた。

「………う」

涙が出てきた。この数年の私の苦労はどこへ……

「無視したテメーが悪い」

爆豪は悪びれもなく言う。あかん涙が止まらない。

ネクタイを掴む爆豪の手に涙が溢れ落ちる。爆豪はそれに気づいて手を離した。

「昨日のこと、言ったら殺す」

そう言って彼は自分の席に戻った。

えっ、それだけ？

それだけの為に、セーブデータ消えたの？

「あんまりだぁ……」

某奇妙な冒険の男のセリフが思い浮かんだが、流石にあそこまではやれないので、静かに泣いた。片手で目を覆い、片手はイベント進行の為にボタンを連打した。

「ば、爆豪。鈴木泣いてるぞ」

「知るか」

切島が心配するも、爆豪は我関せずといった態度だ。

「にしても鈴木、泣き方も男らしいぜ！」

爆豪は心の中でそこかよ、とつっこんだ。