季節外れ ページ6
「お帰りなさい」
冬美姉さんが声をかけてくれた。私はそれに向き直り何か返そうとするが声がでない。これを何と説明すべきだろうか。唯一の本は、固く閉じて開くことはない。
「……」
結局なにも言えずに立ち去る。居間にいる兄とも目があったが、何と言えばいいかわからない。どうしようもなくなって部屋に逃げ込んだ。
「……なんか、様子へんだったね」
「腹痛いんじゃないか？」
その様子を二人は不思議そうに見つめていた。
*
手紙を書こう。思いついたのはそれくらいだった。結局私が避けるようにしていたから連絡先も知らない。だったら直筆メッセージを送るしかない。
本当はいいきっかけだと思った。現状を維持するままじゃ前に進めない。どのみち兄とは仲直りしたいと思っていたのだ。
シンプルな便箋とシャーペン。私は本を置いて内容を考え始めた。
*
くしゃくしゃになった便箋は24枚。ただ今25枚目を書き始めた。
私の気持ちを上手く言葉にするのは難しい。それこそ、針穴に糸を通すように繊細な作業。
何よりも、あまり話さない兄に本音を伝えるというのが難易度高い。そしてこの過去は決して軽いものではなく、言葉選びも慎重にしなければならなかった。
とにかく声をとられたのが痛すぎた。筆談で充分だろうと甘く見てしまった。声とは感情を伝え、思いを表現する。それがない今、どんな言葉も焦凍にとっては嘘にも聞こえるのだ。
「ご飯出来たよ〜」
姉の声がした。そういえば声がでない説明をしていなかった。何というべきか、季節外れの風邪なんて言い訳は無理矢理過ぎるか。
メモ帳とシャーペンをもって立ち上がった。
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ティアラ(プロフ) - とっても面白いです！更新待ってます (2018年11月14日 22時) (
レス) id: af09f6c40f (このIDを非表示/違反報告)
吹雪姫 - 早く続きがよみたいです (2018年11月12日 22時) (レス) id: 1cf32e6046 (このIDを非表示/違反報告)
マユ(プロフ) - 普通に人魚姫のお話だと思ってましたがこういうオリジナルなお話もいいですね。更新待ってます (2018年11月12日 21時) (レス) id: 03d4b99ba5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：くず湯 | 作成日時：2018年11月11日 23時
