魔女にとられた ページ4
『少女は兄が恐ろしくなりました。自分のせいで負った傷は一生治ることのないもの。きっと兄は私を恨んでいるだろう。謝らなければ、と。』
『しかし、謝ることは出来ませんでした。兄は変わってしまったのです。憎しみに支配され、鋭い刃物のような目をするようになりました』
『私が煮え湯を浴びていれば、兄は変わらなかったかもしれない。少女は罪悪感に襲われました。兄とも話さなくなり、いつしか険悪な仲になっていました。』
綴られていく事実に、冷や汗をかく。これが、今までの私の過去。誤りはほぼなく、あるとするなら冒頭の"優しい少女"の部分だろう。
もう何も書かれないはずだ。この本は、図書館の人に預けよう。そう思い本を閉じようとした瞬間。
『しかし』
浮かび上がった新たな文字。慌てて開くとじわじわとインクが滲む。
『少女は仲直りしたいと願いました。あの時の事を謝りたいと。』
確かに思っている、現在進行形で。だが今まで書かれたのはすべて過去のこと。もし今から書かれるとするなら未来のことだ。
『そして少女は、勇気を出して謝りま』
「ねえ君」
思いきり勢いよく本を閉じた。話しかけてきたのは同い年くらいの少年で、前髪が目にかかって暗そうな印象を受ける。
「そこ、邪魔なんだけど」
「あっ、すみません」
慌てて避けると男は本を探し始めた。結局人魚姫は返すことが出来ずに、席に持ってきてしまった。
そっとさっきのページを開く。そこにあるのは黒いインク……ではなく、赤いインクで書かれた文字だった。丁寧な文字ではなく、荒々しい字で。
『そして少女は、声が出せなくなりました。"私は"判断したのです。謝る気がないなら、声など必要ないと』
「ッ……」
は、と言おうとした声は、息となって音とならなかった。
喉を押さえる。何度息を吸っても音にはならなかった。
声がでない。その事実を理解するのにさほど時間はかからなかった。
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ティアラ(プロフ) - とっても面白いです！更新待ってます (2018年11月14日 22時) (
レス) id: af09f6c40f (このIDを非表示/違反報告)
吹雪姫 - 早く続きがよみたいです (2018年11月12日 22時) (レス) id: 1cf32e6046 (このIDを非表示/違反報告)
マユ(プロフ) - 普通に人魚姫のお話だと思ってましたがこういうオリジナルなお話もいいですね。更新待ってます (2018年11月12日 21時) (レス) id: 03d4b99ba5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：くず湯 | 作成日時：2018年11月11日 23時
