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伊吹の後に続き車へ戻ろうとした時だった。
抑えたと思っていたはずの俺の感情が少し、いやかなり顔に出ていたんだろう。
橘が俺の顔を見て少しギョッとしてから、あたふたし始める。
ふぅと一度息を吐き出してから、俺はいつも通りの表情を橘に見せた。
「 行こう。」
『 はっ、はい。』
「 志摩さん橘さん、行くよ〜!」
伊吹の呼びかけに俯いていれば、隣からコソッと声が聞こえた。
『 伊吹さん、悪い人じゃないはずですから……怒らないであげてください。』
そう眉をハの字にさせた橘に見上げられたら、これから怒りますなんて言えるはずもなく。
俺は橘を見つめ返して頷いた。
分駐所へ戻ってくれば、会議室で麺を茹でている陣馬さんとパソコンと向かい合っている九重さんが見える。
陣馬さんは橘に気がつくなりすぐこちらへ近寄って来た。
「 あんたが補佐として来てくれた嬢ちゃんか!」
『 っはい、橘Aです……。』
突然のことに驚いたのか、素早く俺の後ろに隠れ陣馬さんと会話をする橘。
少し警戒しつつも頑張って会話をする姿が、何だか本当に猫のようだ。
「 俺は陣馬耕平、よろしくな!」
「 九重世一です。 元鑑識課の橘さん、よろしくお願いします。」
『 よろしくお願いします、陣馬さん、九重さん。』
ぺこりと俺の後ろで頭を下げる橘を見てニヤニヤする伊吹を横目に、俺は陣馬さんの麺作りを手伝おうと近づいた。
会議室で麺を茹でるなんて聞いたことがないが、今は仕方ない、目を瞑ろう。
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作者名:ふぃのぁ | 作成日時:2024年2月2日 14時