ー ・ ー ページ5
・
少しして、なにやらソワソワし出す橘。
『 後ろの車、近くないですか?』
「 俺も思った〜、こういう時機捜ってどうするんすか?」
「 無視です。」
食い気味に答えれば、ふーんと面白くなさそうに伊吹が呟いた。
それから暫くしても、後ろの車はやめるどころか更に強めの煽りを続けてくる。
警察車両だと知らないからこんなことができる、知らぬが仏というべきか。
「 ふはっ、めっちゃ煽られてる。」
「 先に行かせましょう。」
笑いを溢す伊吹を一瞥してから指示を出す。
すれば、突然後ろの車と張り合うように運転を始めた伊吹。
「 行かせてください。」
「 こういうのはね、ナメられちゃだめ。」
「 いやナメるナメないの問題じゃない。」
クラクションが大きくなっていく、橘は後ろで必死にアシストグリップを掴んで縮こまっていた。
「 はい道交法違反。」
『 警告して止めた方が……。』
橘の言葉に、待ってましたと言わんばかりに俺はサイレンを鳴らす。
が、いくら注意しようと止まらないどころかスピードを速める車。
そして丁度信号のところに差し掛かった時だった。
猛スピードで走る車のせいで、道端で歩いていたおばあちゃんが倒れてしまう。
それを見た伊吹は小さく「 この野郎。」と言葉を溢してから、思い切りアクセルを踏み込んだ。
「 調子に乗りやがって!」
『 伊吹さんっ……!?』
「 待て! ちょっ、待て待て、おいっ!」
叫んだ時にはもう遅く、すでに伊吹はアクセルを思い切り踏み込みシフトレバーをグッと引き、ハンドルをグルリと時計回りへ回していた。
『 いっ、いぶ、伊吹さんっ、止まって!!!』
「 バカバカバカバカバカ!!」
焦る思考の中で唯一覚えていたのは、伊吹の意気揚々とした顔だった。
・
105人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ふぃのぁ | 作成日時:2024年2月2日 14時