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少しして、なにやらソワソワし出す橘。





『 後ろの車、近くないですか?』


「 俺も思った〜、こういう時機捜ってどうするんすか?」


「 無視です。」





食い気味に答えれば、ふーんと面白くなさそうに伊吹が呟いた。


それから暫くしても、後ろの車はやめるどころか更に強めの煽りを続けてくる。


警察車両だと知らないからこんなことができる、知らぬが仏というべきか。





「 ふはっ、めっちゃ煽られてる。」


「 先に行かせましょう。」





笑いを溢す伊吹を一瞥してから指示を出す。


すれば、突然後ろの車と張り合うように運転を始めた伊吹。





「 行かせてください。」


「 こういうのはね、ナメられちゃだめ。」


「 いやナメるナメないの問題じゃない。」





クラクションが大きくなっていく、橘は後ろで必死にアシストグリップを掴んで縮こまっていた。





「 はい道交法違反。」


『 警告して止めた方が……。』





橘の言葉に、待ってましたと言わんばかりに俺はサイレンを鳴らす。


が、いくら注意しようと止まらないどころかスピードを速める車。


そして丁度信号のところに差し掛かった時だった。


猛スピードで走る車のせいで、道端で歩いていたおばあちゃんが倒れてしまう。


それを見た伊吹は小さく「 この野郎。」と言葉を溢してから、思い切りアクセルを踏み込んだ。





「 調子に乗りやがって!」


『 伊吹さんっ……!?』


「 待て! ちょっ、待て待て、おいっ!」





叫んだ時にはもう遅く、すでに伊吹はアクセルを思い切り踏み込みシフトレバーをグッと引き、ハンドルをグルリと時計回りへ回していた。





『 いっ、いぶ、伊吹さんっ、止まって!!!』


「 バカバカバカバカバカ!!」





焦る思考の中で唯一覚えていたのは、伊吹の意気揚々とした顔だった。









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作者名:ふぃのぁ | 作成日時:2024年2月2日 14時

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