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「 機捜で手柄あげれば、捜査一課も夢じゃないっすよね。」
「 ……。」
「 優秀な刑事しか行けないって考えると、憧れるよな〜。」
『 ……。』
先程からずっとこの調子だ。
伊吹が他愛もない話をずっと喋りまくり、俺と橘はダンマリ。
特に答えたくもない質問に答えるほど、俺は暇じゃない。
あくまでも犯罪を見逃さぬよう外を眺めている体で伊吹を無視していれば、突如名指しで会話が振られた。
「 ねぇ、志摩さんと橘さんは?」
「 ……俺はあんまり、現場であればどこでも。」
『 え、っと、私も別に……捜一でなくとも現場であれば。』
俺と同じく外を眺めていた橘は、驚いたのか体をびくりと震わせてから慎重に質問に答えている。
……何だか猫みたいだな。
ルームミラーに移る彼女を見てそう考える。
橘を観察していればふいに、伊吹に肘で突かれた。
「 行けますよ。」
「 ん?」
「 志摩さんくらいの人だって、頑張れば捜査一課行ける!」
『 ……伊吹さんあの、』
「 橘さんも絶対行けるよ! 一緒に頑張りましょうってことで!」
橘はそれっきり、困り顔でまた黙ってしまった。
橘の言いたいことはわかる。
俺が前は捜査一課にいたことを知る橘からすればとんだ失礼に聞こえる伊吹の発言、だがおそらく伊吹はそれ知らないのだ。
別に咎めるほどのことでもないので放っておく。
しかし、イライラするかしないかと言われればやはり自分も人間なもので。
少しできた心のモヤに、俺は真顔で蓋をした。
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作者名:ふぃのぁ | 作成日時:2024年2月2日 14時