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『 ボイスレコーダーのこと、黙っててごめんなさい……。』
「 いいよぉ全然、志摩さんに圧かけられてたんでしょ？」
パーキングへ急ぐ途中、橘ちゃんが珍しく声をかけてくれたと思ったらこの話。
大体志摩の後ろに隠れてる印象があるため、彼女と一対一で面と向かうのはなんだか少し気恥ずかしい。
何故志摩に懐いているのか、それはいまだに謎のままだが。
件のことを実際俺はあんまり気にしてないのでそう言うも、納得できないのか叱られた子供のようになる彼女。
その姿があまりにも可愛らしく、思わず心がきゅーっとなった。
「 本当に怒ってないから、ねっ！ 橘ちゃん笑って！」
ほら、と彼女の頬を優しく摘んで口角を上げさせれば、最初こそ目が合わず眉を下げていたが、暫くすれば面白くなったのか溶けるように笑う。
それは、いつもどこか怯え警戒している雰囲気の彼女からは考えられないほどの笑みで。
『 ……ありがとおございます。』
俺の手によって上手く口の動かせない彼女は、舌足らずな言葉を発した。
その姿に不覚にも本心で、きゅるきゅるとか言ってられないほど愛おしいと思ってしまった自分がいて。
「 何してる、早く来い！」
『 あっ、は、はい！ すみませんっ。』
少し遠くの志摩に声をかけられた彼女はすぐ元の顔に戻って俺の手からすり抜けていく。
懐いたかと思えばすぐフラフラとどこかへ行ってしまう、その手を掴めているようで空を切っているような、そんな彼女。
俺は、その怯えた瞳の中に何があるのか気になってしまった。
……まずは志摩以上の信頼を勝ち取るとこからかなぁ。
少し自分の手を見つめた後、俺はひとり満足げに笑った。
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作者名：ふぃのぁ | 作成日時：2024年2月2日 14時
