エピローグ ページ24
あれから何週間か経った。
俺と珀は前までと何も変わらなかったが、何か変わったような気もする。
ふとした仕草に胸を弾ませたり、ついつい珀の事を目で追ってしまったりした。
それは珀も同じらしく、この前の帰り道に
「御前、可愛すぎだよ」
なんてカッコ良すぎて胸が張り裂けるかと思った。
御前こそカッコ良すぎだから、何て言える訳がないのだから、大声で馬鹿! と、言って照れ隠しをしようとしたのだが、バレバレだったらしくそのまま抱き締められたりもした。
有澤君との関係は俺が一方的にギクシャクしているが、有澤君は
「うじうじすんなや、……今まで悪かったな」
なんて、言われたものだから、吃驚しながら、
「ありがとう」
なんて言えば、調子乗んなや、と怒られた。
それでも、有澤君との距離が近くなったような気がする。
少しづつだけど、話してくれるのが嬉しく思えた。
秋君はいつもの様に俺と話してくれるし、時々相談をするようになった。
何かと秋君は鋭いから、隠し事は出来そうにない、のだが、俺の腐男子センサーと言うのだろうか、が働き、有澤君の事をどう思っているのか、なんて聞けば
「内緒」
だなんて、掴み所のない笑顔ではぐらかされた。
思わず頰が緩みそうになるのを抑えるのに苦労したものだ。
とある日の事、隣の席の山内君が落とした本を拾い上げると、それは俺が愛読しているシリーズのBL本だった。
「うえ、あ、え、や、山内、く」
驚き過ぎてそんな言葉を漏らせば、山内君は笑いながら、
「僕もすきなんだ」
と、言って笑ってくれた。
そんな事をキッカケに山内君と色々と話すようになった。
今では一緒に本を買いに行くようにも、
「そんなに見なくても、春沢君はとらないよ」
いつの日かそんな事を山内君が言った。
ふと後ろを向くと、珀が俺を見つめているのだ。
山内君のその言葉を聞いた珀は、柄にもなく顔を赤くしていた。
「朝陽!」
余計な事を言うな、とでも言うかのように珀は山内君を制す。
「嫉妬、したのか?」
珀の顔を覗き込むと、顔の赤さはもう引いていた。
「馬鹿、したよ」
俺の方が恥ずかしくなったが、同時に幸せにも思えた。
隣の山内君が、にやにやしていたを、俺は知る由もなかったのだけれど。
こんな幸せな日々が嬉しくて、楽しくて、これから先色々あるのかもしれないが、それでも、珀の隣で笑っていたい。
皆と一緒に、いれたら、なんて。
俺はそっと、珀の耳に囁いた。
「ありがとな、愛してる」
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りんご(プロフ) - 誤字ごめんなさいw (2019年10月28日 20時) (レス) id: 92785b223f (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - 腐男子視点の小説はあまり見ない方でしたが、少しもどかしい感じも含めて、とても面白がったし、いいお話だなと思いました!これからも頑張ってください!! (2019年10月28日 20時) (レス) id: 92785b223f (このIDを非表示/違反報告)
群青色の五月雨(プロフ) - 薄氷さん» コメント二度もありがとうございます!! やっと完結しました。ここまで見てくださりありがとうございました。誉めてもらえて嬉しい限りです。薄氷さんも小説頑張ってください!応援してます。 (2018年1月5日 16時) (レス) id: 227c123589 (このIDを非表示/違反報告)
薄氷(プロフ) - 完結おめでとうございます!!最後の最後まで面白くて、萌えが凄くて、素晴らしかったです、語彙力がなくてすみません。絵も楽しみにしています、完結、お疲れ様でした。 (2017年12月23日 14時) (レス) id: 6feeadb499 (このIDを非表示/違反報告)
群青色の五月雨(プロフ) - 真城双葉さん» 読みにくい小説ですが、読んでいただけらなら嬉しいです。コメントありがとうございました。 (2017年12月10日 2時) (レス) id: 227c123589 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:群青色の五月雨 | 作成日時:2017年5月28日 15時