留守電 ページ18
「あ、……あー」
俺はあれから何時間かたった後、ふらふらした足取りで家に帰った。
家につけば真っ先に自分の部屋に向かいベッドに倒れこみ泣き続けた、いや、今もまだ少しだけだが涙が出てきていた。
声は枯れて目も腫れている。
俺が泣いて良いわけがないのに。
何度も携帯を手にとって珀の電話番号を入れた。
電話をするわけではない、そんな勇気などあるものか。
だが、こうでもしていないと落ち着かないのだ。
電話の電源を落とし、俺は枕に顔を埋めた。
このままじゃいけないのも分かっている。
鼻をすすり、横になったまま、再度携帯の電源をつけまた、番号を入れた。
俺って女々しいのかな。
そんなことを考えれば、自嘲の笑みを溢した。
珀から、電話とか来たらどうしよ。
そう考えた次の瞬間に、携帯が繋がった機械的な音が部屋に響いた。
はっ、として携帯に目を向けると、珀から電話が掛かってきた訳ではなく、俺が間違えて着信ボタンに触れてしまっただけだった。
そっとスピーカーボタンを押して、息を静かに整える。
なんて、言えばいいんだろ……
そう思っても電話からは
『只今電話に出れません、ピーっという発信音の後に___』
そう、乾いた女の人の声が聞こえてきただけだった。
俺は安心したような、苦しいような複雑な気持ちになった。
俺は少し躊躇った後、声を出す。
「は、珀、……あの、な、明日、放課後」
そこまでいけば、時間が足りなかったのか、ぷつっと留守電も切れてしまった。
運、ねぇな……
泣きつかれたのか、俺はそのまま目を閉じて眠りについた。
どうすればいいのか。
何をすればいいのか。
分からないまま夜は更けていく。
ああでも、一つだけ分かっていることは確かだ。
伝えなければいけないことがある、言わなければいけないことがある。
珀が、どうしようもなく好きだと言うことを。
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りんご(プロフ) - 誤字ごめんなさいw (2019年10月28日 20時) (レス) id: 92785b223f (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - 腐男子視点の小説はあまり見ない方でしたが、少しもどかしい感じも含めて、とても面白がったし、いいお話だなと思いました!これからも頑張ってください!! (2019年10月28日 20時) (レス) id: 92785b223f (このIDを非表示/違反報告)
群青色の五月雨(プロフ) - 薄氷さん» コメント二度もありがとうございます!! やっと完結しました。ここまで見てくださりありがとうございました。誉めてもらえて嬉しい限りです。薄氷さんも小説頑張ってください!応援してます。 (2018年1月5日 16時) (レス) id: 227c123589 (このIDを非表示/違反報告)
薄氷(プロフ) - 完結おめでとうございます!!最後の最後まで面白くて、萌えが凄くて、素晴らしかったです、語彙力がなくてすみません。絵も楽しみにしています、完結、お疲れ様でした。 (2017年12月23日 14時) (レス) id: 6feeadb499 (このIDを非表示/違反報告)
群青色の五月雨(プロフ) - 真城双葉さん» 読みにくい小説ですが、読んでいただけらなら嬉しいです。コメントありがとうございました。 (2017年12月10日 2時) (レス) id: 227c123589 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:群青色の五月雨 | 作成日時:2017年5月28日 15時