俺のものでもあるのだと。 ページ19
.
感じた気配に、
Aはゆっくりと目を開けた。
目上げた視線の先に、
息を切らせた杏寿郎が立っていた。
「…杏…寿郎、」
「ハァッ……よかった、…探したんだ」
「…あの……ごめん、なさっ!!」
言い終えるより早く、
Aは杏寿郎に勢いよく抱きしめられた。
「すまないっ…!信用できないなど…俺は、最低な事を言った…!」
「……っ」
「俺を許さなくていい、だがっ…これだけは分かってほしい…!俺はっ……Aを愛している…!」
「……ぅ…ん…、」
「Aが鬼殺の剣士として、鬼を斬るために全てをかけているのは理解しているし、尊敬している!そんな君を、俺は好きになった」
「……うん…っ」
「それでも俺は!…生きて俺の元へと帰ってきてほしい…!!危険な任務では、命を優先してほしい…っ」
Aを抱きしめる杏寿郎の身体が、震えている。
表情は見えない。
それでもその想いが、Aに痛いほど伝わってくる。
「今回の件は……君を他の男の目に触れさせたくないという俺の嫉妬心が強かったのは認めるがっ…」
「……」
「それでも俺は、……俺が言いたかったのは…」
「……私の命はもう、杏寿郎のものでもある」
「っ!!」
「……分かってるよ」
杏寿郎の身体が、ゆっくりと離れる。
Aを恐る恐る見つめる視線が、
その目が、揺れていて
Aはくしゃりと顔を歪ませた。
「…ごめんね、杏寿郎…っ」
「……A、」
「私を心配してくれてただけなのに……頭に血が上って、飛び出して、…玄関まであんなにしちゃって」
「…俺が心にもない事を言ったせいだ。謝ることはない」
「今回の任務は、辞退させてもらえないかお館様に頼んでみる」
杏寿郎の目が見開かれる。
Aは小さく微笑んで、
杏寿郎の頬を両手で包んだ。
「もし無理でも、遊女としての潜入じゃなくて、他の方法がないか提案するよ」
「…いいのか、」
「愛する夫が嫌だって言うんだもん。…私も、杏寿郎以外に触られるのは嫌だからね」
「……すまん」
「私も配慮が足りなかった。ごめんなさい。…でも私は、例え相手が上弦の鬼だとしても、…きっと戦うと思う」
己の信念を曲げるのは、
愛する者の願いだとしても、難しい。
だからこそAは、
杏寿郎と夫婦になる際に、『約束』したのだ。
生きて、ここへ帰ってくると。
.
1580人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
香澄 - とっても面白いです!!今日の朝は電車で笑いを堪えながら見ていました笑。更新頑張ってくださいね! (2月19日 21時) (レス) @page8 id: 130dd00968 (このIDを非表示/違反報告)
ユリア(プロフ) - RUNAさん» コメントありがとうございます、分かりにくくてすみません、わざと火の表記にしています。日の呼吸について詳しく明かされていない状態での会話になるので…… (7月22日 14時) (レス) @page22 id: bb66615edf (このIDを非表示/違反報告)
RUNA(プロフ) - 失礼かとも思うんですが、火の呼吸じゃなく日の呼吸ですよ! (6月19日 22時) (レス) @page22 id: 391b329446 (このIDを非表示/違反報告)
夕 - 何度も続けてのコメントですみません。 物語読んでいて気が付いたのですが。。。 番外編.有能妻の日常のここの部分 待っていろ!と掛けて行った。 これ正しくは駆けて行ったではないんでしょうか? (2021年11月2日 1時) (レス) @page34 id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
夕 - またまた続けてのコメントですみません。。。 物語一気に読んじゃいました。 この物語では煉獄さん生き延びることが出来て良かった です。。。 その後のお二人のことが気になります。 (2021年11月2日 1時) (レス) @page33 id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユリア | 作成日時:2021年2月13日 23時