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「好きだった、触れてほしかったと、何度も君の口からこぼれ落ちる度に、…俺は拳を握りしめた。何故、…何故、君が想う相手は俺ではないのかと」
「……ぇ、」
「だから、狡い聞き方をした。俺を好いているのかと、先程聞いただろう?」
そうではないと分かっていたのに。
ゆっくりと身体を離して、そう続けた杏寿郎さんは、
寂しそうに笑っていた。
情報量に、頭が追いつかない。
私は杏寿郎さんに、想いを伝えてしまっていた。
杏寿郎さんはそれを、別の誰かに対するものだと思っていた。
だから悔しくて、カマをかけた。
そして私は、それに釣られた……と。
「……だから、聞かなかったことにしてくれ…?」
「うむ!仕切り直しをさせてほしい!」
仕切り直し…?
戸惑う私に、杏寿郎さんはコホン、と1つ咳払いをした。
「A、俺は君が好きだ」
「…………」
「再会して気がついた。俺は初めて会ったあの日、あの瞬間から、Aが好きだった」
「……そ、んな、」
「だから、A。…俺に、言ってくれ」
「……っ」
「あの日の言葉を、君の本当に望むことを、…俺に、言ってくれ」
これは、都合のいい夢だと、
私はまだ、鬼の血鬼術で都合のいい幻覚でも見せられているのだと。
そう、分かっていても。
目の前で、大切に想ってきた人が、
聞かせて欲しいと願っている。
言ってもいいのだと、言ってほしいと、望んでいる。
だから、今だけ。
今だけは、どうか。
素直な気持ちを、伝えさせて。
「……初めて、会った時から、…ずっと、ずっと好きでした…っ」
「……うん」
「本当は、ずっと、…私を見てほしくて、私だけに、触れてほしくてっ……愛して、ほしかった…!」
「……うん」
「好きです…、杏寿郎さんが…好き…っ」
泣くな、
泣きながら告白なんて、狡い。
歪む視界を手で拭って、必死に堪えた。
ひとしきり打ち明けてしまった私は、
何も話さない杏寿郎さんに、不安で押しつぶされそうになった。
怖い、
言ってほしいからと素直に話してしまったけれど…。
恐る恐る視線を上げる。
そして視線が合わさると、
杏寿郎さんは、
愛おしそうに、優しい顔を浮かべた。
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まゆ - 無理のないように頑張って下さい!ユリアさんのファンになりました٩(๑>∀<๑)۶ (2月4日 9時) (レス) @page19 id: 311499c733 (このIDを非表示/違反報告)
ユリア(プロフ) - まゆさん» うわーーんコメントありがとうございます( ; ; )ドキドキ!嬉しいです!頑張ります(*´˘`*)♡ (2月3日 22時) (レス) id: bb66615edf (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - とても素敵なお話です!読んでいるとすごくドキドキしました♡続きが気になります!更新を楽しみにしてます⸜( •⌄• )⸝ (2月3日 15時) (レス) @page16 id: 311499c733 (このIDを非表示/違反報告)
ユリア(プロフ) - にこさん» ( ᴗ͈ ᴗ͈)” 勢いのまま完結まで書き切りたいと思います(*˙˘˙*) (1月23日 1時) (レス) id: bb66615edf (このIDを非表示/違反報告)
ユリア(プロフ) - さやさん» (*´˘`*)♡ (1月23日 1時) (レス) id: bb66615edf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユリア | 作成日時:2024年1月21日 14時