39 ページ39
.
実習も残り半月、という頃。
その日は突然訪れた。
「もうすぐ実習終わりですね」
そう声を掛けられ、振り向いた。
声の主は、垂れた眉と目尻が印象的な、
非常勤講師の西条先生だった。
あまりに突然の事で、少し驚いて返事に困ってしまった。
というものの、
この実習期間、会話をするのが今日初めてなのだ。
「ぁ…は、はい、あっという間でした…!」
「あの冨岡先生についていけてるなんて、すごいですね」
「そんな…まだまだです」
優しい笑みを浮かべる西条先生に、
慌てて顔の前で手を振った。
西条先生は、この学園では珍しい一般の人だ。
…おかしな言い方になってしまった、
正しくは、前世鬼殺隊ではなかった人。
もしかしたら何か繋がりがあるかもしれないけれど、
少なくとも私の記憶にはなかった。
「……でもこれでやっと、プライベートで会えますね」
「…え、?」
聞き返すのと同時、
ふいに髪を右手で掬われる。
慌てて後ずさる私に、
貼り付けたよう笑みで、その右手を口元に寄せた。
ぞくりと、
嫌な予感に背中が震えた。
「楽しみですね、…A」
「っ…さ、西条先生…っ?」
「では、また」
「あのっ…!!」
制止も虚しく、
西条先生はその場を去って行った。
…どう、しよう。
突然の事に上手く頭が働いていないけれど、
これは多分…よくない。
少し前に経験した、バイト先でのことを思い出す。
自分の行いに、何か悪い部分でもあるのだろうか。
何故こうも、問題ばかり起こってしまうのだろうか。
「?どうかした?Aせんせ」
「っ…宇髄、先生、」
「……何かあったのか?」
私の驚きように、異変を察知したのか
宇髄先生が眉を顰める。
いけない、また心配をかけてしまう。
「いえっ、資料忘れてきちゃったーって気付いて」
「あー、まだ間に合うんじゃねぇの?」
「はい!行ってきますっ」
「廊下走るなよー」
そう揶揄うような声が背中に届いて、
少し気が紛れた。
宇髄先生と不死川先生には、
先日の件でも随分とお世話になってしまった。
今回は、自分でどうにかしないと。
そう唇を噛んで、
ファイルを持つ手にぎゅっと力を込めた。
※長らくお待たせしてしまって本当にすみません…(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
882人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちゃも(プロフ) - すごく好きな内容でした!キュンキュンしたり感動の涙を流したりしてしまいました!続編待ってます! (2023年1月11日 1時) (レス) @page50 id: fdbe52dffa (このIDを非表示/違反報告)
ユリア(プロフ) - 澪凪さん» 最後までお付き合い下さりありがとうございましたー!。゚(゚´ω`゚)゚。 亀更新ですみません。゚(゚´ω`゚)゚。 また長編書く際も読んでもらえると嬉しいです! (2021年11月29日 12時) (レス) id: 20317e0f29 (このIDを非表示/違反報告)
ユリア(プロフ) - 京華さん» 長らくお待たせしてしまって申し訳ないです。゚(゚´ω`゚)゚。 完結まで見届けて下さって感謝しかありません。゚(゚´ω`゚)゚。 ありがとうございました! (2021年11月29日 12時) (レス) id: 20317e0f29 (このIDを非表示/違反報告)
澪凪(プロフ) - 完結おめでとうございますっ!!いやもう素晴らしすぎてトリコになっていました!!!お疲れ様でした!!!! (2021年9月29日 21時) (レス) @page50 id: f9618e512a (このIDを非表示/違反報告)
京華(プロフ) - 完結おめでとうございます!ユリアさんの煉獄さんは格好良くて本当に大好きです!ユリアさんの煉獄さん愛が滲み出すぎて私は毎回溺れています、笑...不甲斐ないなんてとんでもない!更新嬉しかったです!ありがとうございました!!! (2021年9月27日 23時) (レス) @page50 id: 483ff1bb3b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユリア | 作成日時:2021年3月27日 23時