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仕事を終え、

急ぎ足で待ち合わせた店へと向かう。



今向かっている、とメッセージを送ると、

少しして、
『一番奥の席にいます』と返信があった。



自然と口元が緩む。




あんなふうに、

弱い自分を見せたのは…初めてだった。


上弦の参、猗窩座との戦いで命を落とした俺は、


結末を見届けられなかった自分に、

最後まで戦えなかった自分に、


どこか、

後ろめたさを抱いていたのだと。



それに気付いた時、


俺は宇髄や不死川達と前世の話をするのが少し…

辛く感じる時があった。



Aに話を聞いて、

俺は、


自分が楽になりたいだけの最低な人間だと気付いた。



そんな俺に、


Aは、





「すまない!待たせてしまった!」

「いいえ、私が早く来すぎちゃって…!」





奥に見えた姿に、慌てて駆け寄った。


俺に気付き、立ち上がった彼女に

ドクリと、胸が鳴った。


何だ…?





「連日すまないな!それに今日は貴重な休みだろうが…」

「私も、もっとお話したかったので…」





気にしないで下さいと、

小さく笑った彼女に、また胸が軋む。


誤魔化すように席へつき、
ひとまず注文を入れた。





「昨日は恥ずかしい姿を見せてしまったからな!お詫びに今日は俺にご馳走させてくれ!」

「そんな…!私こそ、情けない話をしてしまって…お役にも立てずに申し訳ないです…」

「そんな事はない!」

「いいえ、そんなこと…」

「むぅ…埒があかないな!この話はこれでお終いだ!」

「!…ふふっ、はい」





食事をとりながら、

俺とAはただ、話をした。


鬼殺隊としての戦歴、

平和が訪れてからの毎日、

今世での互いの身の上話、



不思議と話は尽きなかった。


どうしてか、

このままこの時間が続けばいいと、


そんなことさえ思ったほどに。





「はー…楽しくて、たくさん食べちゃいました」

「俺もだ!…楽しかった」

「……またこうして、お話したい、です」





聞こえ漏らしそうなほど小さい声で、


それでも確かに聞こえたそれに、



俺はたまらなく、

高揚した。







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ちゃも(プロフ) - すごく好きな内容でした!キュンキュンしたり感動の涙を流したりしてしまいました!続編待ってます! (2023年1月11日 1時) (レス) @page50 id: fdbe52dffa (このIDを非表示/違反報告)
ユリア(プロフ) - 澪凪さん» 最後までお付き合い下さりありがとうございましたー!。゚(゚´ω`゚)゚。 亀更新ですみません。゚(゚´ω`゚)゚。 また長編書く際も読んでもらえると嬉しいです! (2021年11月29日 12時) (レス) id: 20317e0f29 (このIDを非表示/違反報告)
ユリア(プロフ) - 京華さん» 長らくお待たせしてしまって申し訳ないです。゚(゚´ω`゚)゚。 完結まで見届けて下さって感謝しかありません。゚(゚´ω`゚)゚。 ありがとうございました! (2021年11月29日 12時) (レス) id: 20317e0f29 (このIDを非表示/違反報告)
澪凪(プロフ) - 完結おめでとうございますっ!!いやもう素晴らしすぎてトリコになっていました!!!お疲れ様でした!!!! (2021年9月29日 21時) (レス) @page50 id: f9618e512a (このIDを非表示/違反報告)
京華(プロフ) - 完結おめでとうございます!ユリアさんの煉獄さんは格好良くて本当に大好きです!ユリアさんの煉獄さん愛が滲み出すぎて私は毎回溺れています、笑...不甲斐ないなんてとんでもない!更新嬉しかったです!ありがとうございました!!! (2021年9月27日 23時) (レス) @page50 id: 483ff1bb3b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユリア | 作成日時:2021年3月27日 23時

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