姫金魚草 (ページ8)

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朝起きると蘇る昨日の記憶。

やっぱ夢じゃ無かった、
現実は僕に味方してはくれないらしい。

昨日の出来事によって、少し近づいたと思った距離は縮まってはいなかった。

それどころか僕が思いを伝えたところで、僕の見たことのない表情をさせる幼なじみには敵うはずがないと思ってしまった。諦めるしかないのか。

ぐるぐると考え込みながら最悪な気分で事務所へ向かった。その後の振り落としは、もちろん集中できるはずもなく。

『まこっちゃん。そこの振りズレてんで。』

「陣さん。すみません。」

リーダーの陣さん、リキヤさんにも注意を受け、挙句の果てに心配までされる始末。

メンバーも心配そうな表情でこちらを見ている。
僕に何かあったのを察知しているけど、聞いてこないのはメンバー達の優しさ。

こんなに私情を仕事に持ち込むとかプロ失格じゃんと更に落ち込む。

休憩中、見兼ねた壱馬さんが僕のところへ来た。

『慎。なんかあったん？昨日あの子とご飯行ったんちゃうん？』

「それが…。」

一通り昨日の出来事を話し終えると、壱馬さんは
はあ、とため息をつき、口を開こうとした。

「え、まこっちゃん、好きな人いたの？」

するとそこへ側で話を聞いていたのか会話に混じってきた北人さん。

なになに気になる、と興味津々に聞いてくる。
そんな北人さんの隣にいた樹さんが空気を読み、それを制する。

「はいはい、北人さん。向こう行きますよ。
　スタッフさんが呼んでるんで。」

えー、と言いながら樹さんに連れて行かれる北人さんを見ながら、壱馬さんが再び口を開いた。

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