姫金魚草 (ページ5)

今日:19 hit、昨日:0 hit、合計:142,714 hit

05 ページ5

.

「Aさん！お待たせしました。」

『長谷川くんお疲れ様。』

押してしまった収録が終わり、急いで駆けつけたのだが待ち合わせ時間に少し遅れてしまった。

すみません、と言うと、Aさんはいつもの優しい笑顔で笑ってくれる。

「『かんぱ～～い」』

少し歩いて隠れ家風の創作居酒屋へとやってきた僕たちは、頼んだお酒で乾杯をしながらたわいもない話をする。

『その帽子かぶってきてくれたんだね。』

Aさんが、個室にあるフックに引っ掛けた僕のかぶってきた帽子を見つめながらそう言う。

「はい。めっちゃ気に入ってて。」

今日は、絶対この前買った新作の帽子をかぶるって決めて来た。Aさんに似合うって褒められたから。

『そっかあ。嬉しい。長谷川君ってほんとお洒落だよね。また良いのあったら紹介するね。』

「まじですか？嬉しいっす。」

「ってかAさんっていくつなんですか？」

『私？２３だよ。』

「え！僕と１つしか変わらないじゃないですか。大人っぽく見えますね。」

『そう？笑』

店員と客。

今はまだその関係だけど、少し１歩彼女に近づけたような気がして嬉しかった。

でも、そんな喜びはそう長くは続かないなんて、この時の僕はまだ知らない。

.