姫金魚草 (ページ35)

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Aside

「『完成～！』」

出来上がったオムライスをダイニングテーブルに並べ、2人揃って手を合わせる。

『Aさんの作ったオムライスめっちゃ美味しいっすね。』

次から次へとオムライスを口に放り込む慎くんを見ながら、若い男の子の食欲ってすごいな、なんておばさんみたいな事を考えていた。

「お口に合ったみたいで良かった。」

料理が好きで、1人でもよく作っているので、褒められるのは嬉しい。

あっという間に食べ終わってしまった慎くん。
こんなに美味しそうに食べてくれたら、作りがいがある。

『ごちそうさまでした。』

『作ってもらったんで、僕が片付けしますね、AさんはTVでも見てゆっくりしててください。』

そう言い残してキッチンへと向かう慎くんをソファーに座りながら見送る。

「あ、うん。ありがとう。」

言われた通りテレビを見るも、1人になると思い出すのは壱馬のこと。

仕事一筋の壱馬は、絶対女の子になんて靡かないって私は勘違いしていたのかもしれない。

でも、西園寺さんと付き合ってるのに、なんであの日私を抱きしめたの？
私は、あの温もりをなかなか忘れることが出来なかった。少しでも期待した私ってバカみたい。

TVの音なんて、私には、全く届かず。

『Aさん、泣きたい時は泣いてください。』

気づけば、リビングへと戻って来ていた慎くん。
背後に温かい温もりを感じて、後ろから抱きしめられているのだと気づく。

『思いっきり泣いたら、また笑えますから。』

「、、、っっっ。」

温かい体温と、優しい声を聞いた途端、涙が込み上げて来た。

何も言わなくても全てを悟ってくれている慎くんに、私は何度救われているのだろう。

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