姫金魚草 (ページ31)

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Aside

壱馬に抱きしめられたあの日から、どうして急にあんなことしたんだろう、とモヤモヤしたつつも聞けないまま日が経ち、少しずつ暖かくなり始めた。

壱馬からもこんなに連絡が無いことは初めてで、仕事が忙しいのかな、と少し心配だった。

そんな今日は、慎くんと少し遠く離れた絶景スポットまでドライブへ。
この前、電話で行きたいって言ったら覚えててくれて慎くんが誘ってくれたんだ。
私の運転する車に慎くんを乗せるのは緊張したけど、(絶対に事故できないし)それよりも大変だったのは、慎くんを後ろに乗せること。

「僕、Aさんの隣がいいです。」

『だから！ダメって言ってるじゃん、慎くんは後ろです。どこに誰がいるか分かんないんだから。』

「、、わかりました。でも、田舎道になったらいいですよね？」

『ふふっ、もう～はいはい』

と、そんなこんなで無事に到着した私たちは、駐車場から絶景スポットまで歩いている。
ここは穴場中の穴場だよって楓に教えてもらった場所で、どんな絶景が見えるのかワクワクしながら歩みを進める。

「あ、Aさん！こっちみたいです！」

突如、慎くんに手を引かれ走り出す。
坂を頂上まで登りきるとそこに見えたのは、

「わあ～！きれい！」

大きな青い空と青い海。
そして下に広がる菜の花畑。

「慎くん見てみて！」

テンションが上がって慎くんの方を振り向くと
ﾊﾟｼｬッと音がした。

『いい笑顔ですね。可愛い。』

「ええ、撮ったの！？恥ずかしいから消して！」

『絶対やです。』

いたずらっ子のような笑顔で笑う慎くんを見て、
彼といると安心できる、そう思った

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