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私はとにかく無我夢中で仕事をした。
今まで断っていたモデルの現場にも行くようにした。
ポートレートは撮らない主義で貫いていたがもう、私には仕事しかなかった。
時おり耳に入る“SnowMan”“深澤辰哉”の言葉に耳を塞ぎながら
あれから2年。私は30を目前としていた。
辰哉の事もすっかり吹っ切ってると思っていたそんな冬と春の間の日のことだった
「吉田さん……?」
雑誌の企画の打ち合わせで出向いてた出版社で突然後ろから声をかけられた
「あ!ご無沙汰してます。阿部です」
『あ……あべちゃんさん…?』
あの時よりも少しだけ凛々しくなった顔つきに驚きながらも会釈をした。
「すみません。見かけたのでつい……」
『あぁ全然です』
私がしどろもどろしているとあべちゃんさんはふっかは居ないですよ。とフリースペースでお話しましょと言ってくれた
「あの…話は聞いてます」
『うん。気使わせてごめんね。辰哉は?元気?』
「元気です。本当に元気なのかは分からないですが」
『辰哉って案外繊細さんだから…これからもよろしくね』
「あの…僕がこんな事言うのもあれなんですが……もう会わないんですか?」
『うん。会わないよ』
胸が痛んだ
本当は心の底から会いたいし
今ならやり直せるんじゃない?って何回も思ったけれど
これはお互いが選んだ道だから私はそう答えるしかなかった
彼はまた、と会釈して去っていった
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作者名:えなち | 作成日時:2023年3月22日 10時