傍観者【3年A組】 (ページ34)

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先生が教卓にスマホを置きボタンを押した。きっとあの刑事さんと通話が繋がっているのだろう。

「そろそろタイムリミットだ」

時計が7時48分を指している。

「まずは、僅かな可能性にかけて…フェイク動画を撮った人！」

誰も手は挙げない。先生はもう一度だけ訪ねたが教室は依然静かなまま。

「…仕方ない。じゃあ刑事さんに当ててもらおうか。刑事さん分かりましたか？」
《あぁ、直前まで迷ったけどな》

スピーカーにしてあるのかスマホから刑事さんの声がよく聞こえる。

「ちなみに誰と迷ったんですか？」
《熊沢花恋と里見海斗だ》
「へぇー、里見とはまた意外ですね」

あげられた名前に皆がザワつく。

《里見は真壁からジャージを借りていた。彼を更衣室へ案内した大会関係者も見つかった。里見がイケメンだから覚えていたそうだ。…問題はどちらがこの動画を撮ったのか。その鍵を握るのは袖の汚れだ》

先生がスマホを持ち上げ画面を見つめる。おそらくその時の画像でも見ているのだろう。

「確かにオレンジ色の染みがついていますね」
《おそらく何かが付着して洗ったんだろう。そこで二人にその日何を食べたか聞いてもらった。その結果、一人がトマトジュースを飲んでいた》
「トマトジュース、たしかにトマトジュースならオレンジ色の染みがつきそうですね。…で、その生徒は、一体誰だったんですか？」

緊張感が走った。

《……熊沢花恋だ》

「…え」

私はその答えに吃驚して小さく声を出してしまった。だって、熊沢さんなはずがないのに。

「違う…私じゃない…私じゃない！！」

熊沢さんが音をたてて立ち上がる。

「私は大会の日はゼリーしか食べてないって言ったでしょ」
「え？」

状況がよく理解出来ずに思わず先生の方を見る。先生は至極おちゃらけた声色で言葉を発する。

「あ！そうだったすまない熊沢！先生間違えちゃったよハハハ…」
《おいおいちょっと待てよどういう事だ！》
「…刑事さん、いやー大変素晴らしい洞察力でした。しかしあなたは内通者を信じすぎた」

内通者。…内通者？
先生から出た言葉に頭の上にハテナを浮かばせる。

《まさか…お前が？》
「いやいや、内通者は僕じゃありませんよ。ただ僕も、刑事さんと生徒のやり取りを閲覧することが出来るんです」
《内通者の生徒はお前の共犯者って事か…》
「ピンポーン」