人間嫌い？な人魚のお話。

・Twenty six ページ31

✻


『やぁ、ユウくん

漆黒の闇から覚醒した眩い光…
汝も力を解き放て』


「お、おはようございます」


目を覚ましたユウは辺りを見渡すと、
既に寮服に着替えたAの姿が目に映る。

まだAの事が怖いのか、
怯えながらも挨拶をしてくれた。


「んが……もうカビのクラッカーは
いらねぇんだゾ……むにゃ……」


グリムはまだ寝ているようで
気持ち良さそうに寝ながら寝言を言っていた。

すると、鍵の開く音がして、
勢いよくドアが開かれる。


「お前たち、いつまで寝ている気だ！
起きろ！」


「ふがっ！？なんだ？
……って、まだ朝6時なんだゾ

Aももう起きてたのか……」


『ホリデーが無い時は
自分の朝飯を作って洗濯もして、

他寮の偵察をしているからな』


と笑いながら話すAに

「オメー、すげぇんだゾ」と
眠そうにしながらも褒めるグリム。


『まぁ……オクタヴィネル寮は
何をしても“自己責任”だからね』


そう言って、まるで牙のような歯を見せて
不気味に笑うAに

「これより、東のオアシスに向けて
10キロの行進を行う！」

とスカラビアの寮生は大きな声で言った。


「足場の悪い砂漠を10キロも？

なんでオレ様たちが
そんなことしなきゃいけねぇんだゾ」


『あんな砂漠を歩くとか……アホなのか？』


「つべこべ言うな
お前たちも参加せよと寮長が仰せだからだ！」


『またアイツか！！』


頑なに行こうとしないグリムに
「来い！」とスカラビアの寮生は

引っ張りながらも、砂漠に移動する。


「フギャ〜！
ヤダヤダ〜〜離すんだゾ〜〜！」


＿＿＿＿＿＿＿＿



「それでは今から、
東のオアシスに向けて行進を開始する！

これは足腰を鍛える訓練だ

隊列を乱した奴は、あとで折檻だからな！」


大きなゾウの上に乗って、
腕を組みながら言うカリムに

「なんでオレ様がこんな目に……」と
グリムは溜め息を吐いていた。


『ああ……巻き込むのもいい加減にして欲しい』


「口じゃなく足を動かせ
さあ、出発だ！」


＿＿＿＿＿＿＿＿



「そこ！隊列が乱れているぞ」


とカリムの視線には
完全に疲れ果てているグリムの姿。


「ひぃ、ハァ……少し休憩させてくれ〜」


「甘えるな！さあ、進め！

この程度で音をあげるのは
日頃の鍛錬が足りていない証拠だ！

昨日までの自分を恨むんだな」


『本当に別人みたいだな……
……さあ、グリムくん。後少しだから頑張ろう』


「……………」

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