獣と薔薇 (ページ2)

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コンコンッ

少女は洋館の扉を叩く

近くでみるとより一層不気味である

まるで、ここだけ、ぽっかり違う場所からやってきたような、そんな雰囲気を漂わせていた

「すみません！誰かいらっしゃいませんか？」

外はまだ雨が降り続き、止む気配はない

扉には鍵がかかっているのか、軽く押したり引いたりしてみたが、開く気配はなかった

「誰も、居ないのかな」

少女は、濡れて頬に張り付いた髪を退けながら、辺りを改めて見渡す

全体的に作りは古いが、ツタなどが巻きついているわけではなく、きちんと手入れが行き届いていた

まるで、ついこの前まで人が住んでいたかのように

「やっぱり、誰か住んでいるのかな…」

キィー……

？「あれ…？」

「！？」

扉の開く音に、後ろを振り向くと、
そこには、自分よりも少し背の低い男の子が立っていた

黒いカッターシャツに白いネクタイ、ワインレッド色のジャケットを羽織った彼は、この屋敷と同様にどこか不思議な雰囲気を漂わせている

？「…ずぶ濡れだね」

彼はボソッと呟いた

「え、あ、急に降り出したので…

あの、しばらく、ここで雨宿りさせていただいてもいいですか？」

？「…いいけど、今日は雨、このままやまないよ？」

「そうなんですか！？」

？「うん。そういう匂いがする」

そういうと彼は、空を見上げる

匂い……？

？「とりあえず、中入りなよ」

「え、いいんですか？」

？「だって、そのままじゃ寒いでしょ？

…僕はユーリ。よろしくね」