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有紗は意味深な笑みを浮かべながら自分の過去を話し始める。
まず花が聞いたのは、彼女が昨年まで入院していた事、次に聞いたのはこの学校を受験した理由、最後に聞いたのは家族の事だった。
入院していた原因は、幼い頃から持っていた喘息。この学校を受験したのは、よっぽど成績が悪くない限り進学できる中高一貫校だったから。
家族ははじめのうちは見舞いに来ていたが、そのうち来なくなって敬遠になり、今は有紗が退院した事すら知らないらしい。
有紗は今叔母に引き取られているとのこと。
花は笑顔なのか泣きそうなのか曖昧で、なんとも言えない表情で過去を語る有紗を何度も止めようとした。
しかし、有紗は話をやめようとはしなかった。
過去を振り返ることと、何故か花が自分を受け止めてくれそうな気がしたことと、長距離で疲れた感覚が少し喘息の発作に似ていたこと……そんな理由で有紗は話していた。
「……それで、病室の微妙暗さを思い出させる雨の日とか、病院食を思い出させる薄い味の食べ物も苦手でね……ま、そんな感じかな。ゴメンね花ちゃん、変な話聞かせちゃって」
「ぜ、全然! それで有紗ちゃんが楽になれたのなら、それだけで嬉しいよっ!」
有紗は雰囲気を重くしてしまったことに謝罪するが、花は気にしてない様子で、それどころか嬉しそうですらある。
友達にこういう事を話してもらえるのも初めてだし、あの雨の日に有紗の瞳が寂しそうに見えた理由も分かったから。
そんな花の様子を見て、有紗はほっと息をついた。
「じゃあさ、花ちゃん」
有紗は少し俯かせていた顔を上げて花と向き直る。
花はこれから何を言われるのか緊張して、息を呑んだ。
「……そばにいて? これからも。あたしが出会ってそんなに経ってない子にこんなことを言うってことは、そういうこと」
有紗はそれに続けるように、「あたしの親友第一号でいてください」と口パクをした。
一方、花は有紗の過去を知ってしまい、放っておけなくなってしまった。
それに、有紗の事も友達として好きだ。
花は迷わず「私でよければ!」と返事を返した。
有紗はそれを聞いて、今まで誰かに見せた無いほど輝いた笑顔を咲かせた。
「よろしく、花」
……有紗がそう耳元で囁き、花を赤面させたのは誰にも内緒。
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作者名:ミナ | 作成日時:2018年4月13日 22時