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#012_19(前野side) ページ9

前野「何から何まで申し訳ない……。ありがとう」
A「任せてください。じゃあ、鈴木さんをお連れしないとですね」

部屋を出ようとする彼女に「俺が行くよ」と伝え、急いで寝室を出て玄関へと向かう。
たつは先ほどの姿勢のまま眠っていた。

前野「たつ、立って?」

そう言いながら彼を抱き起こし、まだかろうじて歩いてくれている姿に安堵をしつつ、寝室へと向かう。
寝室につき、ベッドに座らせ、上半身を横たわらせたあと足をベッドへと持ち上げれば、彼女がやさしく布団を掛けた。

A「お疲れさまでした」
前野「お疲れさまです。この状態だと朝まで起きることはないと思うから」
A「分かりました」

電気を消し、二人で寝室を出る。

前野「じゃあ、俺は帰るよ」
A「お茶でも、と思ったんですけど、タクシーをお待たせしていますしね」
前野「あぁ、そうだった。急いで戻らないと」

少し急ぎ足で玄関へと向かっている途中、彼女が何かに気付いて「先に玄関へ行っててください」と言い残し、寝室へと戻っていった。
靴を履きながら待っていると、「帰り際に申し訳ないです」と、先ほど持たせたままだった紙袋を見せる。

前野「ごめん、たつのことで忘れてた」
A「ふふ……、このまま鈴木さんにお渡しをすれば大丈夫ですか?」
前野「大丈夫。着替えのほかにもいろいろ入っているから、Aちゃんは何も準備とかしなくていいからね」
A「気を遣っていただいて、すみません」
前野「いや、俺の方こそごめん」
A「いえいえ」
前野「じゃあ、よろしくね」
A「お任せください」

その言葉に頼もしいなと思いつつ玄関のドアを開ければ、「下までお送りします」と彼女が靴を履き始めた。

前野「ここまででいいよ」
A「ですが……」

見上げた彼女に「寒いし、もう家で暖かくしてて?」と伝えれば、少しの間のあと「じゃあ、お言葉に甘えて……」と眉を下げ笑う。

前野「今日はありがとう。楽しかったよ」
A「私もです。これからもよろしくおねがいします」

微笑む彼女に「おやすみ」と告げ、静かにドアを閉めた。

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作者名:シュリ | 作成日時:2018年3月31日 3時

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