王道のど真ん中 (ページ2)

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遭難と麦わらページ2

もちろん、過去に関する記憶は曖昧なので本当に最上級かと聞かれれば定かではないけれど、とにかく今の私は喉が渇いて仕方がなかった。

「…………。」

奥においやった小箱から、毒々しいみかんを手に取る。正直海で拾った食べ物に手をつけるなんてじさつ行為に等しいけれど、それでもこの乾きを癒したい。私は覚悟を決めて、それの皮を剥き、口に運んだ。

「う゛ぇ゛ぇぇぇぇ…」

ひどい味だった。おおよそ人が食べるなんて想定もしていないような、そんな味。腐っているわけではなさそうなのでお腹を壊すことは無いはずだけど、いっそ腐ったみかんの方がマシ……そう思うほどにひどい味だった。

「詰んだ……」

相変わらずの遭難状態。空腹なうえにあんなものを食べてしまったが故に口渇も加速していく。
明らかに詰んでいるとしかいいようがない状況に、私は再び倒れ込む。

「これじゃ、本当にガチの島流しだな……。私そんな目にあうようなことしてないはずなんだけど」

胸の内に渦巻く黒ずんだ何かはずっと死にたくないと叫んでいるけれど、この状況では為す術もない。もしも誰かに害されているのならば、何らかの抵抗の術はあったけれど、その害が謎の遭難と合っては仕方の無いことなのだろう。

「我が生涯にいっぺんの悔いなし……」

いや嘘。多分悔いしかない。やり残したこといっぱいある気がする。何も思い出せやしないけれど。
伸ばした手は虚しく空を切った。

「なあ、お前こんな所で何してんだ？」

「うお！！？びっくりした……」

視界に飛び込んできたのは麦わら帽子が特徴的な見知らぬ……ん？見知らぬ？というよりは、どこかで見たことあるような、でも絶対知り合いじゃないそんな少年。てかこの海のど真ん中にいきなり現れたんですけどどういうことですか？海坊主的な妖怪ですか？そのわりに笑顔がはちゃめちゃに眩しいが。

「なあ、こんな所で何やってんだ？」

「さあ。私がいちばん知りたいよそんなの…。意味もわかんないけど漂流してんの。君なんか食べ物持ってない？」

出会い頭になんとやら。こんな海の上でいきなり食べ物をたがる女もどうかと思うが、私は今命かかってるんで多めに見て欲しい。少年はそうか、とだけ頷いて海の向こう側に向かって手を伸ばす。

「……はぁ！！？？？」

いやいやいやいや、何その手！？？
明らかにバカすぎる長さで伸びた少年の手はどうやら離れた場所に浮かんでいた小舟の縁を掴んだらしい。