王道のど真ん中 (ページ1)

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こんにちは世界ページ1

目が覚めるとそこは清々しい大海原でした。

「……は？」

なんの冗談かと頭こそ疑えど、事実は変わらない。
見渡す限りの青い空に青い海。見事な景色である。それが、周りに島も船も確認できないようなどこかの海で、なおかつ私の乗っているものがろくな設備の整っていない小舟じゃなければ。

「島流しにでもされた？…え、誰に？」

食べ物もなければ、もちろん飲水すらも持たないまま私は海の上を漂っている。
いやはや驚き驚き、先程まで自室でゴロゴロとうたた寝に勤しんでいた私は気がついたら漂流者になっていた。

「これは夢。うん、紛れもない夢。はい解決」

独りでに納得して私は元のように小舟に寝そべった。
やけにリアルな熱意を持ってじりじりと私の肌を焦がす太陽も、先程からしつこく鼻腔を刺激する磯の香りも全ては夢の産物。きっと私は疲れてたんだろう。この際だから癒されたいと私はこの満点の青空をぼんやりと眺めていた。

「……あっっっつ！！！！」

空を眺めていた私はいつの間にかうたた寝をしていたらしい。あまりの日差しの強さに飛び起きてみれば、周囲の景色は変わらず青いままだった。

「夢じゃないし……なんなのマジで……」

コツン

「んぁ？宝箱…？」

不意に小舟にぶつかったのは随分と使い古された宝箱のようだった。私は藁にもすがる気持ちでそれを引きあげ、蓋を開けた。

「……え、なにこれ」

中に入っていたのは形こそみかんの様ではあるけれど、明らかに原色カラーの危険物だった。
浮き上がる渦巻き模様が余計生々しい。

「人間の食べ物じゃないでしょこれ……毒ガエルみたいな見た目してんだけど」

さすがにこれを食べようとは思えなかった私は古ぼけた宝箱を小舟の端においやって周囲を見回した。

「食べ物もない、飲み物もない、島も見えない、そもそも何故私がここにいるかも分からない…………」

というか、私って誰だっけ？いや名前はわかる。もちろん年齢や性別も。そしてここに来る前、ここではないどこかにある私の部屋にいたはずだということも。だけどそれ以外があやふやで、霞かかっているように思い出せない。

「ここはどこ、私は誰？？」

記憶喪失、と言うやつだろうか。それとも何か違う原因があるのか。何らかの理由があったとしても、今の私には知る術なんかないのだけど。

「……のど、乾いたし」

こんなカンカン照りの中で昼寝なんかしたものだから喉の乾きは最上級を記録している。