ＭＩＮＤ 【白石蔵ノ介】

１７_HATE ページ19

キスされたんだと気付くまで、そんなに時間はかからなかった


「ん………ふぁっ、」


酸素を求めて口を開くと、狙っていたかのように隙間からぬるっとした物が入り込んでくる。
ゆっくりと歯列をなぞられる慣れない感覚に、ゾワリと鳥肌が浮かんだ

同時に舌じゃない違和感。
なんだこれ……？
ﾁｭｯと音を立てて離れた唇に、思わずゴクリとそれを飲み込んでしまう


「な、にして…っ！」

「くすり」

「………は？」

「『薬』や、今飲み込んだばっかやろ。薬嫌いなお前のために、俺が体張って飲ませてやったんやん」


どやった？
そう口角を上げてニヤリと笑った白石くんは、確かにどうしようにもなくイケメンだった


「あっ、りえない！！どうしてアンタはそうも淡白なわけ！？こっちは体調不良だって言ってんのに……もう、お願いだから今日は帰ってよ」

「はぁ？俺はお前のためにわざわざ―――」

「それが為になってないんじゃん、帰って」

「でも―――」

「帰って」


今はアンタの顔も見たくない、
白石くんの背中を渾身の力で押しながら言うと、彼は抵抗をやめたようで力を抜いてくれた


「せやなぁ、俺も同意見やわ」


パタン、と静かに扉が閉じられて外から自転車をこぎだすような音さえも聞こえてきた。
どうやらちゃんと帰ってくれたらしい
その事実と今までの苦労感から、フと足の力が抜ける感覚

私は情けないながらもその場に座り込んでしまった
さっきの事を思い出すだけで顔に熱が集中する


おかしいよ、おかしいおかしいおかしい！
嫌いだよ、アイツの事なんか。嫌い、嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い

嫌い、なのに……


「なんで、嫌じゃなかったの……？」


コトン

何かが落ちた音。
これからの心境の変化が、なんとなく予想できた瞬間だった――…


＝＝＝＝＝＝＝＝

ご無沙汰してます、久々の更新です。
本来は物語の合間にあまり私情を突っ込みたくないのですが、お待たせして申し訳ありませんでした

これからゆっくりになるとは思いますが更新再開していきます

新作アンケートの方もご協力お願いします

１８_LETTER→←１６_MEDICINE

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す