No.0 ページ12
『そこにいたのか…！』
昔、行ったという夕焼けがとても美しく見える丘。
何でここなんだろうか？
純粋に気になる。
『貴様、ぶっ潰してや…』
殴りかかろうとすると見えた涙。
流石に同情で驚きで左手のやり場をなくす。
潤「A、自分の出生を知っているか？」
『知るわけねーよ』
物心ついた時からあそこにいたんだから。
つーか、アンタが知ってるとか可笑しくない？
とか思ってたら、いきなり語りだした。
✼
お前はあの城の中にいたやつの子供でな、いずれか外で戦わせるつもりだったけど出来なかった。
何故かって？
お前は跡部家に買われてたからだ。 正確には跡部景吾に。
アイツらはそーとーの変わりもんだ。
オレの城をぶっ壊したんだぜ。
それで一番出来てるやつらを手放した。
今こーやって偽善者ぶってるお前は、オレを殺して何したい。
まあ、お前は親父を殺すだけか。
『は？ 何を言っておられるんですか』
『ボクがアンタの子供とか、城とか』
潤「本当だが、それが？」
うっわー、親と結婚するとこだったじゃん。 あぶねー。
『お前のする事は間違ってる。 ボクやせーいちみたいな人を生み出して、彼らはそんなの違うって言ってるんです』
『人を道具みたいに扱って、吐き気がするよ』
潤「それでオレを殴っても意味ないだろう」
「なあ、No.0」
氷の様な冷たい声で、ボクは反論出来ない。
何故なら、あの檻の中で何度も聞かされ染みつき動く事さえ許されないのだから。
すると、ガサゴソと苗木が揺れ、葉っぱを髪にいっぱいつけた男が出てくる。
『ゆ、侑士…』
「来ないでください」ただそれだけが言えない。
言えないのはボクの弱さと君への愛しさで。
侑「自分、いっぱい背負いすぎや。 オレには甘えろ言うたやん」
「オレ、そない頼りないか？」
潤「誰だ、君は」
侑「Aの…うーん、何やろなあ」
チラッとこっちを見る侑士はボクの考えなんかお見通しって顔で。
なんかイラッとするけど、言ってしまうんだ。 あの時から。
『恋人、です…多分』
満足そうに微笑む侑士と反対にアイツは苛立ちを隠せずにいる。
潤「…おめでとう」
風で揺れた髪で顔を隠し、ぼそっと言った。
驚きと恥ずかしさでボクはこう言った。
『は？ 何言ってんだ』
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作者名：夏 | 作成日時：2015年11月23日 16時
