10『夢中なのに』 ページ10
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「それ、ホストの手口だよ」
「ほんと酷い言い方するね」
昼休み、向かいの席に座るスングァンがカレーを口に放り込みながら、私に冷たい視線を送る。
「Aちゃんがホストに捕まったなんて…僕おばさんに合わせる顔ないよ〜」
「だからホストじゃないってば!」
「はいはい、オージサマオージサマ」
「違うよ、ジュンフィさん!」
「もーAちゃん、うるさい!」
「どっちが!」
私にしてはよくやったと褒めてくれるのではないか、なんて少し期待していた私が馬鹿だったようで、結局いつも通りやいのやいのと言い合うことになってしまった。
食堂が賑わっているおかげで、大声で揉めていても幸い私たちだけが目立っていることはない。
「ね、スングァン見て」
お弁当を直すついで、鞄から手帳サイズの本を取り出すと、スングァンは「なにそれ?」と身を乗り出した。
「花言葉の本。昨日ジュンフィさんに教えてもらったのが面白くて、帰りに買っちゃった」
「うわぁ…いよいよだね…」
スングァンの小言は聞こえないふりをして、ペラペラとページをめくる。
「結構面白いよ?例えばね、今日飾ったデルフィニウムの花言葉は“清明”」
「あー、あの青いやつ?」
「うん」と頷けば、興味ないフリをしつつも、「ふーん」とこちらに関心したような目を向けながら水を飲むスングァン。
ほら、やっぱり面白いんじゃない。
改めて本の表紙を眺める。
別にジュンフィさんから頂いたわけでもないのに、なんだか無性に愛しくなって、ギュッと抱きしめるようにして胸の前でそれを抱えた。
「次の雨の日に、この本買ったんですって報告するんだ〜」
頬をだらしなく緩め、すっかり浮かれ気分の私に、スングァンはため息をつきながら「あ〜ほんと」と呆れた。
「そんなに会いたいなら今日行けばいいじゃん」
「今日は晴れだからダメなの」
「なにそれ、なんのこだわり?」
「こだわりっていうか…私は雨の日に大通りを歩くのが嫌だからお花屋さんの前の道を通ってるだけで、その…別にやましい気持ちがあるわけじゃ…」
嘘だ。今まで散々言っておいて、下心がないはずないのに。
自分でも呆れそうだ。言わずもがなスングァンは「はあ〜?」なんて顔を歪ませている。
でも、
「だって会えないんだもん。理由がないと…」
本当は私だって会いたいけど。
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ミラルカ(プロフ) - レンさん» コメント、ありがとうございます!わ〜よかったです!!ホッとしました 笑。後編も楽しんでいただけるように頑張りますね! (2019年11月26日 0時) (レス) id: 0059877645 (このIDを非表示/違反報告)
レン(プロフ) - じゅんぴの敬語、言われるまで気付きませんでした〜笑笑 この作品すごく好きなので続きが楽しみです! (2019年11月25日 21時) (レス) id: 7ddd2a9a14 (このIDを非表示/違反報告)
ミラルカ(プロフ) - satoetu61さん» コメント、ありがとうございます!この二人が一緒にいる作品、なかなかないですもんね…意外な組み合わせかなぁと思っていたのですが、こうして喜んでくださる方がいて安心しました!後編もよろしくお願いします〜! (2019年11月24日 23時) (レス) id: 0059877645 (このIDを非表示/違反報告)
satoetu61(プロフ) - 楽しみに読ませて頂いています。私の3人の推しの中の,2人スングァン、ジュンが出てくるので嬉しくて。2を楽しみにしています。 (2019年11月24日 23時) (レス) id: 02f0e3e684 (このIDを非表示/違反報告)
ミラルカ(プロフ) - ねこ娘さん» バ、バレておりましたか!鋭いですね…さすがです!(笑)主人公ちゃんがどのような答えを出すのかは、後編までのお楽しみということで…お待ちくださいませ〜〜! (2019年11月24日 19時) (レス) id: 0059877645 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミラルカ | 作成日時:2019年10月18日 22時