40『せっかくなのに』 ページ40
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朝になっても、昨日の雨が降り続いている。
いつもは帰り際にしか寄らないお花屋さんだが、今日は朝から足を運ぶことにした。
昨日行けなかったから、今日は特別。
だけど、コンビニで買ったビニール傘でそこに向かうのは、どこか心許ないような気がして、その足取りは重い。
それでも、出勤時間に遅れるわけにはいかず、お花屋さんのある閑静な小道に足を進める。
夜の寂しさはどこへやら、朝の爽やかな光を浴びるそこは、いつもとは違う場所みたいだ。
「あれ〜?」
お花屋さんの前で足を止めた途端、ジュンフィさんの目が私を捉え、大きく開かれた。
「Aさん!」
「おはようございます」
「あ、おはよーございます」
初めての朝の挨拶に、お互い何故か気恥ずかしさを覚えて、照れ笑い。
朝のジュンフィさんもカッコいいな、なんて浮かれたことを思ったのは秘密だ。
「昨日来なかったから、風邪でもひいたのかなって思ってたんだけど、元気そうでよかった!」
「風邪じゃないんです。昨日は、ちょっと…」
昨日の出来事を思い出し、つい口を噤む。
言えない、こんなこと。
すると、ジュンフィさんは私が沈んだことに気付いたのか、慌てた様子で首を振った。
「ううん、僕も怒ってるわけじゃなくて…ごめんね…!」
ああ、私は何をジュンフィさんに謝らせてしまっているのだろう。
そんな自分を情けなく思いながら、「私の方こそ、すみません」と改めて謝罪すると、ジュンフィさんはますます悲しそうな顔をする。
「でもね、こうしてAさんと朝に会えて、なんか…嬉しい、僕」
ジュンフィさんはそう言った後、「ありがとう、来てくれて」と微笑んだ。
その優しい表情に、思わず泣いてしまいそうだ。
目頭が熱くなるのを、ぐっと堪えながら、私は辛うじて「いえ…」と曖昧な返事をした。
「あ、そうだAさん。今日は紫陽花の傘じゃないんだね」
ズキリと胸の奥を抉られたような感覚を覚える。
そんな私を他所に「忘れちゃった?」と無邪気に首を傾げるジュンフィさん。
違う、彼は私を傷つけるつもりで言ってるわけじゃない。
だけど、やっぱり胸が痛くて。
「…壊れちゃったんです、昨日」
壊された、とはとても言えなかった。
すると、ジュンフィさんは「あ…」と声を漏らして以降、喋らなくなってしまって。
また辛気臭い雰囲気にしてしまった自分が、腹立たしい。
こんなつもりじゃないのに。
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ミラルカ(プロフ) - レンさん» コメント、ありがとうございます!わ〜よかったです!!ホッとしました 笑。後編も楽しんでいただけるように頑張りますね! (2019年11月26日 0時) (レス) id: 0059877645 (このIDを非表示/違反報告)
レン(プロフ) - じゅんぴの敬語、言われるまで気付きませんでした〜笑笑 この作品すごく好きなので続きが楽しみです! (2019年11月25日 21時) (レス) id: 7ddd2a9a14 (このIDを非表示/違反報告)
ミラルカ(プロフ) - satoetu61さん» コメント、ありがとうございます!この二人が一緒にいる作品、なかなかないですもんね…意外な組み合わせかなぁと思っていたのですが、こうして喜んでくださる方がいて安心しました!後編もよろしくお願いします〜! (2019年11月24日 23時) (レス) id: 0059877645 (このIDを非表示/違反報告)
satoetu61(プロフ) - 楽しみに読ませて頂いています。私の3人の推しの中の,2人スングァン、ジュンが出てくるので嬉しくて。2を楽しみにしています。 (2019年11月24日 23時) (レス) id: 02f0e3e684 (このIDを非表示/違反報告)
ミラルカ(プロフ) - ねこ娘さん» バ、バレておりましたか!鋭いですね…さすがです!(笑)主人公ちゃんがどのような答えを出すのかは、後編までのお楽しみということで…お待ちくださいませ〜〜! (2019年11月24日 19時) (レス) id: 0059877645 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミラルカ | 作成日時:2019年10月18日 22時