36『いよいよ』 ページ36
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いよいよだ、と思ってしまった。
「……え」
つい間抜けな声が漏れる。
というのも、今の状況を理解するのに程々の時間を要してしまったからで。
昨日の向日葵を花瓶に刺すべく、いつもように水を入れに給湯室までやって来たわけなのだが、なぜ私は今、頭から水を被っているのだろう。
ぽたりぽたりと髪から雫を滴らせながら呆然とする私に、手に持っていた花瓶を荒々しくシンクに置いた先輩は、ふっと鼻で笑うと、そのまま何も言わずに給湯室を後にした。
花瓶に入った水の量などしれている。幸い、びしょ濡れとまではいかなかったが、でも確かな事実として、私は先輩から水をかけられたわけで。
コツコツと遠ざかるヒールの音を聞きながら、なんとか現状を飲み込む。
これが、誰かから嫌われるということか。
幼稚だと一蹴してやれば楽なのだろう。
しかし、生憎そんな強い精神など持ち合わせていない私は、ただ打ちひしがれた。
心が、痛い。
キリキリと締め付けられる胸を押さえつつ俯くと、ぽたんとシンクに水滴が落ちる。
違う、これは涙なんかじゃない。
視界がぼやけているのも、かけられた水のせいで、私は泣いてなどいないのだから。
『泣いたら負けだよ、Aちゃん』
いつだったか、スングァンに言われた言葉。
そう、泣いたら負け。だから、私は泣いてはいけないのだ。
こんな嫌がらせに屈するわけにはいかない。
だって私は、大人にならなければいけないのだから。
ポケットからハンカチを取り出し、濡れた髪と顔を拭う。
小さなハンカチではとても拭いきれないけれど、幾分かはマシになっただろう。
再び花瓶に水を入れ、給湯室を出ると、案の定横を通りかかる人たちの視線が刺さる。
居た堪れない気持ちになりながらも、私はなんとか足を前に進めた。
ジュンフィさんからいただいた向日葵を花瓶に刺して飾れば、この苦しい気持ちが和らぐことを願って。
…そう、願っていたのに。
オフィスに戻り、自分の机に向かう。
オフィス内の視線は、廊下よりもずっと鋭く私を突き刺してくるけれど、気にしてはいけないと自分に言い聞かせながら、前を見据えて歩いた。
しかし、自分の机の上を視界に入れた瞬間、私はその足を止めることとなる。
「……」
言葉が出てこない。
だってそこには、ぐしゃぐしゃになった向日葵の残骸が散らばっているのだから。
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ミラルカ(プロフ) - レンさん» コメント、ありがとうございます！わ〜よかったです！！ホッとしました 笑。後編も楽しんでいただけるように頑張りますね！ (2019年11月26日 0時) (
レス) id: 0059877645 (このIDを非表示/違反報告)
レン(プロフ) - じゅんぴの敬語、言われるまで気付きませんでした〜笑笑 この作品すごく好きなので続きが楽しみです！ (2019年11月25日 21時) (レス) id: 7ddd2a9a14 (このIDを非表示/違反報告)
ミラルカ(プロフ) - satoetu61さん» コメント、ありがとうございます！この二人が一緒にいる作品、なかなかないですもんね…意外な組み合わせかなぁと思っていたのですが、こうして喜んでくださる方がいて安心しました！後編もよろしくお願いします〜！ (2019年11月24日 23時) (レス) id: 0059877645 (このIDを非表示/違反報告)
satoetu61(プロフ) - 楽しみに読ませて頂いています。私の3人の推しの中の,2人スングァン、ジュンが出てくるので嬉しくて。2を楽しみにしています。 (2019年11月24日 23時) (レス) id: 02f0e3e684 (このIDを非表示/違反報告)
ミラルカ(プロフ) - ねこ娘さん» バ、バレておりましたか！鋭いですね…さすがです！(笑)主人公ちゃんがどのような答えを出すのかは、後編までのお楽しみということで…お待ちくださいませ〜〜！ (2019年11月24日 19時) (レス) id: 0059877645 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミラルカ
| 作成日時：2019年10月18日 22時
