34『心配なんて』 ページ34
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「………さん……Aさん」
「は、はい!」
名前を呼ばれてハッと我に返ると、視界いっぱいにジュンフィさんのお顔があって、「うわあ!?」と思わず仰け反る。
すると「あ、危ない!」なんて私の腕と肩を掴まれるものだから、心臓が雨の音も掻き消してしまうほどバクバクとうるさく暴れた。
それを悟られないようにしたいのに、目と鼻の先にあるその余りにも整った顔に釘付けになってしまう。
「大丈夫?」
パッと瞬時に離された手。
それが名残惜しくもあったけれど、触れられたところの熱は暫く消えそうにない。
「す、すみません…」
「ううん、Aさんが倒れなくてよかった」
「ちょっとA、花にぶつかんないでよ」
「もーミンハオ!」
ミンハオくんの言う通りだ。ジュンフィさんが引き止めてくれなければ、お花を台無しにしてしまうところだった。
そう思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになったが、それ以上に先程の出来事が頭を離れなくて。
だって、ジュンフィさんに触れた、いや触れられたのは初めてだったから。
彼の手は私よりもずっと大きくて、ごつごつしていた。
普段から慣れているスングァンの手は、もっとふわふわしているから、すごく新鮮で。
どこか浮世離れした彼が、幻なんかじゃないことを、改めて実感した瞬間だった。
「ほんとに大丈夫?Aさん、今日なんかボーッとしてるみたいだけど」
「…ちょっと疲れてるだけですよ。平気です」
だから、そんなに眉を下げて心配そうな顔をしないで。
ようやく会えたのだから、私はジュンフィさんの笑顔が見たいのに。
…かくいう私も、正直上手く笑えている自信なんて少しもないのだが。
結局、またお花屋さんに来てしまった。
スングァンに一度止められているにもかかわらず。
明日、お花を持って出勤したら、また先輩から鋭い視線を向けられるのではないかとか、余計にいじめがエスカレートしたらどうしよう、とか。
自他共に認めるネガティヴ人間である私には、そんな妄想が後を絶たない。
今だって、それを考えすぎて、意識がどこかへ飛んでしまっていたのだ。
ここに来なければ、そんな思いをしなくて済むとはわかっているのだけれど。
だけど、やっぱり
「ん?どうしたの?」
ジュンフィさんに会いたくて。
ついじっと見つめていると、その視線に気付いた彼は私に向かって首を傾げた。
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ミラルカ(プロフ) - レンさん» コメント、ありがとうございます!わ〜よかったです!!ホッとしました 笑。後編も楽しんでいただけるように頑張りますね! (2019年11月26日 0時) (レス) id: 0059877645 (このIDを非表示/違反報告)
レン(プロフ) - じゅんぴの敬語、言われるまで気付きませんでした〜笑笑 この作品すごく好きなので続きが楽しみです! (2019年11月25日 21時) (レス) id: 7ddd2a9a14 (このIDを非表示/違反報告)
ミラルカ(プロフ) - satoetu61さん» コメント、ありがとうございます!この二人が一緒にいる作品、なかなかないですもんね…意外な組み合わせかなぁと思っていたのですが、こうして喜んでくださる方がいて安心しました!後編もよろしくお願いします〜! (2019年11月24日 23時) (レス) id: 0059877645 (このIDを非表示/違反報告)
satoetu61(プロフ) - 楽しみに読ませて頂いています。私の3人の推しの中の,2人スングァン、ジュンが出てくるので嬉しくて。2を楽しみにしています。 (2019年11月24日 23時) (レス) id: 02f0e3e684 (このIDを非表示/違反報告)
ミラルカ(プロフ) - ねこ娘さん» バ、バレておりましたか!鋭いですね…さすがです!(笑)主人公ちゃんがどのような答えを出すのかは、後編までのお楽しみということで…お待ちくださいませ〜〜! (2019年11月24日 19時) (レス) id: 0059877645 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミラルカ | 作成日時:2019年10月18日 22時