３『私だけが』 ページ3
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昨日の雨が、今日もまだ降り続いている。
いつもは憂鬱になるけれど、今日は不思議と嫌な気がしなくて、むしろドキドキと胸が高鳴っていた。
「ほんとに例の花屋さん寄るの？」
私より一足先に帰り支度を済ませたらしいスングァンが、私のデスクに手を置きながら尋ねる。
私はデスク上の資料を片付けながら「うん」と頷いた。
「絶対無理だよ。だってAちゃん知らない人に話しかけんの苦手じゃん」
「別に話しかけるなんて言ってないじゃん…今日はちゃんと中に入って近くで王子様を見るの！」
スングァンはムキになった私を冷めた目で見つめ、「ふーん」なんて口を尖らせる。
「明日泣きついてこないでね。Aちゃん慰めるの、昔から大変なんだから」
「いい歳こいて泣きませんー」
「嘘つけ。この前だって『飲み会で他の人と上手く話せなかった〜』って泣いてたくせに」
「あれは泣いてないもん！ギリギリ！」
幼馴染だからなのか、スングァンには何でも見透かされているような気がして困る。
本当は私だって彼の言うように自信がなく、今も緊張しているのだから、そんな不安を煽るようなことを言わないで欲しいのに。
「はいはい。まあせいぜい頑張ってよ」
本気で思っているのか怪しいそんな言葉を吐いて、スングァンは「じゃあね」と私の席を離れる。
カードをスキャンし、退勤手続きを済ませると、フロア内いっぱいに「お疲れ様でーす」という元気な挨拶を響かせ、革靴を鳴らしながら出て行った。
ああは言うけれど、スングァンは私に甘いと思う。
たとえ本当に明日泣きついたとしても、きっと小言を言いながら私を励ましてくれるはずだ。
だから、きっと大丈夫。
半分自分に言い聞かせるように、何度も心の中でそう唱えながら、私もスングァンに続くようにして会社を後にした。
自動ドアの先は、昨日より少し緩めの雨が降っている。
紫陽花の傘を広げると、行き道でついた水滴がぱんと弾けた。
ゾロゾロと駅に向かうスーツの集団から外れて別の道を行く私は、少し浮かれていたのかもしれない。
だって、あのひっつめ髪の女性も、厚化粧のおばさんも、こっちの道に王子様がいることを知らないのだ。
それだけで、なんだか特別な気分になった。
花に囲まれた王子様に会いに行くには些か質素な黒いパンプスを鳴らし、私は雨の中を歩く。
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ミラルカ(プロフ) - レンさん» コメント、ありがとうございます！わ〜よかったです！！ホッとしました 笑。後編も楽しんでいただけるように頑張りますね！ (2019年11月26日 0時) (
レス) id: 0059877645 (このIDを非表示/違反報告)
レン(プロフ) - じゅんぴの敬語、言われるまで気付きませんでした〜笑笑 この作品すごく好きなので続きが楽しみです！ (2019年11月25日 21時) (レス) id: 7ddd2a9a14 (このIDを非表示/違反報告)
ミラルカ(プロフ) - satoetu61さん» コメント、ありがとうございます！この二人が一緒にいる作品、なかなかないですもんね…意外な組み合わせかなぁと思っていたのですが、こうして喜んでくださる方がいて安心しました！後編もよろしくお願いします〜！ (2019年11月24日 23時) (レス) id: 0059877645 (このIDを非表示/違反報告)
satoetu61(プロフ) - 楽しみに読ませて頂いています。私の3人の推しの中の,2人スングァン、ジュンが出てくるので嬉しくて。2を楽しみにしています。 (2019年11月24日 23時) (レス) id: 02f0e3e684 (このIDを非表示/違反報告)
ミラルカ(プロフ) - ねこ娘さん» バ、バレておりましたか！鋭いですね…さすがです！(笑)主人公ちゃんがどのような答えを出すのかは、後編までのお楽しみということで…お待ちくださいませ〜〜！ (2019年11月24日 19時) (レス) id: 0059877645 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミラルカ
| 作成日時：2019年10月18日 22時
